今期の決算では、エリキュースやプレベナーといった医薬品の売上増に牽引され、増収となるだろう。しかし、一部の医薬品で競争が激化する中、その数字は市場予想に届かない可能性が高いと私たちは考える。また、現在の株価である30ドルは決して割安な水準という訳ではなく、妥当な水準と言えるだろう。
では、ファイザーの業績を牽引しそうなトレンドを確認してみよう。
株価パフォーマンス
PFEの株価は、2021年1月初旬につけた35ドル台から、現在の30ドル前後という水準まで、約15%下落した。過去3年間のリターンは、2021年に60%、2022年にマイナス13%、2023年にマイナス44%だった。これに対し、S&P500のリターンは2021年に27%、2022年にマイナス19%、2023年に24%であり、PFEのリターンは2023年にS&P500を下回っている。バリュエーションの観点で見ると、PFEは適正に値付けされているように見える。私たちはPFEの適正株価は29ドルと見ており、これは現在の市場価格とほぼ一致している。PFEは現在、2024年の予想年間EPSである2.25ドルの13倍で取引されており、過去5年間の平均PER(株価収益率)の15倍を下回っている。しかし、この倍率はコロナ禍における特需の影響も受け、ここ数年で見ると幅広いレンジで変動している。そのため、適正株価を算出するにあたっては、過去の平均よりやや低めのPERを設定するのが妥当と思われる。
直近の決算動向
ファイザーの第1四半期の収益は149億ドル(約2兆2880億円)で、主に新型コロナウイルス向け医薬品の売上が減少したことにより、前年同期比19%減となった。一方、新型コロナウイルス向け医薬品を除いた収益成長率は11%だった。ビンダケルとアブリスボの好調な伸びが全体の収益増に貢献した。その他、エリキュースの売上は10%増、プレベナーの売上は7%増だった。しかし、研究開発費の増加もあり、純利益率は6.7ポイントのマイナスと大きく下がり、31.4%となった。減収と利益率縮小の結果、調整後のEPSは前年同期の1.23ドルに対し、0.82ドルとなった。
今期の決算では、ビンダケルとアブリスボの市場シェアの拡大が貢献する可能性が高い。また、プレベナーとエリキュースの売上も増加傾向にある。新型コロナウイルス向け医薬品の売上は、前年同期と同程度になるだろう。ファイザーが発表したガイダンスでは、2024年の年間収益は585億ドル(約8兆9830億円)から615億ドル(約9兆4437億円)の範囲に、調整後のEPSは2.15ドルから2.35ドルの範囲とされている。
(forbes.com原文)