この間の予想されている年平均成長率(CAGR)は3.72%。市場拡大は主に新興国における需要の高まりと、業界で増えている合併・買収によるものだ。
ラガーやエール、ノンアルコールなど世界中の消費者に提供されている製品の多様さがビール市場の成長を後押ししている。消費者、特に法律で飲酒が認められている若年層の嗜好の変化を反映してクラフトビールの人気が高まっており、また独立系の醸造所が台頭しているとレポートにはある。これらの醸造所は、特にミレニアル世代やZ世代の舌に合うようなフレーバーやスタイルを提供し、率先して製品を開発する傾向にある。
だがエールスミス・ブルーイング、アンハイザー・ブッシュ・インベブ、アサヒグループ、ブリュードッグ、カールスバーグ・ブルワリーズ、クラウドウォーター・ブルー、コンステレーション・ブランズなど世界の大手ビール会社が業界の急成長を主導している。大手メーカーは戦略的な買収を行うことで市場での存在感を高めており、また新しい技術を取り入れ、消費者の多様な嗜好に応えている。格好の例がカールスバーグによるウォータールー・ブルーイングの買収だ。北米での足場固めを狙ったもので、2023年に1億600万ドル(約167億円)で買収した。
こうした前向きなトレンドにもかかわらず、ビール市場はアルコール飲料に対する厳しい規制と高い税金という課題に直面している。世界各国の規制当局はノンアルコール飲料を含むビールの製造・販売・流通を管理する包括的な規則を定めている。例えば米国には食品安全近代化法(FSMA)があり、製造施設の衛生と安全を確保するために適正製造規範(GMP)の順守をビール醸造所に義務付けている。順守しない場合、厳しい罰則や罰金が科される可能性がある。
ビール業界を形成するもう1つの重要な要素は環境面での持続可能性だ。二酸化炭素(CO2)排出量の削減やガラス瓶に代表されるようなリサイクル推進など、ビール会社は環境負荷の少ない慣行を採用するようになっている。この転換は環境をめぐる懸念に対応するだけでなく、増えつつある環境意識の高い消費者を意識した動きでもある。
また、従来使われてきたガラス瓶はビールの味と香りを保つという点で、引き続き好まれている。
観光業もビール市場で重要な役割を果たしており、多くの観光客がビール関連のユニークな体験を求めている。そのため、クラフトビールや特殊なビールの需要がさらに高まり、市場全体の成長に貢献している。
長期的にはオンライン小売が最大の成長要因となるかもしれない。eコマースによりビール会社は規模を問わず顧客へのリーチを大幅に拡大し、消費者は世界中のさまざまなビールを入手できるようになった。個人に合わせたレコメンデーションやターゲットを絞ったマーケティング戦略、顧客エンゲージメントの向上はビール会社が消費者の信頼を維持し、売上を伸ばすために不可欠なツールだ。
(forbes.com 原文)