これは1960年代に始まった制度で、もともとは、夏の数カ月間に従業員の生産性が低下するのを防ごうとしたニューヨークの広告代理店が導入したものだ。従業員たちに、金曜日は普段より早い時間に仕事を切り上げてもらうことで、週明けの月曜日に、リフレッシュして気力がみなぎった状態で出勤してもらおうというのが、雇用主側の狙いだった。さらに時代が下り、コロナ禍の時期になると、ワークライフバランスの改善を求める従業員の要望に雇用主が応えるなかで、この制度が定着していった。
夏季に職場の生産性が低下しがちなのは、広く知られた話だ。実際、Wisetail(ワイズテール)が依頼し、OnePoll(ワンポール)が実施した調査では、回答者の23%が、「暑さは生産性低下の要因になる」と回答している。この傾向に歯止めをかけるべく、多くの雇用主が、人気の勤務制度であるサマーフライデーを導入している。
サムスンをはじめとする企業が幹部に対して週6日働くよう求めている今のご時世に、従業員に金曜日の勤務時間短縮を許すのは、贅沢のように見えるかもしれない。この記事では、サマーフライデーの具体的内容を紹介し、事業の推進に本当にプラスの効果があるのか検証する。
サマーフライデーの内容は?
サマーフライデーとは、夏季における金曜日の勤務時間を、柔軟に設定できる制度だ。従業員は金曜日について、退勤時間を早める、休みにするなどの選択肢から選ぶことができる。この制度はたいていの場合、6月から8月まで適用される。実際には、5月最後の金曜日(米国のメモリアルデーの週末)に始まり、9月の第1金曜日(同じくレイバーデーの週末)まで適用されることが多い。
この制度の実施方法は、企業によって異なる。各企業におけるさまざまなサマーフライデーの実施方法の例を、以下に示そう。
全休:従業員は、毎週金曜日に全休を与えられる
時短:従業員は、普段より早い時間に退勤することを許される
労働時間の「貯金」:月~木曜日の4日間に時間外労働をし、その分で金曜日に休めるようにする
フレックス制度の導入:この制度を導入した場合、従業員は、出勤時間を早める代わりに、退勤時間も早めることができる
ローテーション制度の導入:一部の企業では、金曜日に休む従業員を輪番で指定し、オフィスが完全に無人にならないようにしている
選択制:従業員は、サマーフライデー制度に参加するか、今まで通り、通常の勤務時間制度で働くかを選ぶことができる
サマーフライデーが人気の業種は?
Gartner(ガートナー)の調査によれば、北米企業のうち55%は、従業員向けにサマーフライデー制度を導入している。この制度は、テック業界やマーケティング業界、さらには広告業界など、創造性やイノベーションを重視する業界で特に人気がある。サマーフライデー制度を提供している企業の例としては、ファイザー、バイアコム、IBMなどが挙げられる。また、KPMGやアーンスト・アンド・ヤングのように、1週間の夏季休暇を設け、この期間は完全休業とする会社もある。
KPMGではこれに加えて、「サマー・ジャンプスタート・プログラム」という制度を設けている。前述した、メモリアルデーからレイバーデーまでの期間、従業員は金曜日に限って、2時間早く退勤できる。
データ分析会社のTeradata(テラデータ)では、夏季の数カ月間、毎週金曜日は終業時間を正午と定めている。