第二の問題は、公平性に関する点だ。五輪はフェアプレーの精神を根幹としている。裕福な国はポータブルエアコンを持ち込めるが、そんなぜいたくなどできない国も多い。それは気候変動への適応策における貧富の格差を浮き彫りにするだけでなく、普遍性と連帯という五輪憲章の根本原則にも反している。
流水を利用した冷却設備による暑さ対策が不完全であるなら、すべての参加者が多少の不便を我慢しなければならない。どの選手団も、豊かな国から来たという理由だけで不公平なアドバンテージを得るべきではないのだ。ゆえに、気候問題をめぐる連帯とフェアプレー精神のためには、全選手団がエアコンを使うべきではないだろう。
気候変動に立ち向かうパリの新たな誓い
パリは、2015年に画期的な気候変動協定「パリ協定」が採択された地だ。今年、その誓いを新たにするときが来たといっていいだろう。クリーンな発電源への転換など、気候危機を構造的に解決する方策を追及する一方で、ライフスタイルを変えていくことも気候変動対策の一つである。私たちは皆、どこかで始めなければならない。そして注目度が高いほど、気候変動対策を有言実行する責任も大きくなる。メディアのスポットライトを浴びる五輪は、気候変動への取り組みをアピールする絶好の機会となる。
気候変動とは、これまでどおりのやり方がもはや通用しないことを意味する。私たちは新しい現実を受け入れ、適応することを学ばなければならないのだ。イダルゴ市長は野心的なビジョンを持っており、気候変動について語ることを厭わない。
一部の国がエアコンを持ち込めば、連帯を乱し、フェアプレー精神に反するだけではない。不完全でも低エネルギーのアプローチを率先して信頼する国がある一方で、気候変動の影響から自分たちを守るためにエアコンなどのエネルギー集約的な技術に頼った解決策を使い続ける国もあるというメッセージを発してしまうのである。
(forbes.com 原文)