科学誌Natureで6月に発表された今回の研究は、内核が地球の表面よりも速く自転しているとするこれまでの研究とは逆の結果となっている。
内核
地表から深さ約5000kmより下の最深部に位置する地球の内核は、固体の鉄とニッケルでできた球体だ。月と同じくらいの大きさがあり、液体の鉄とニッケルからなる外核に覆われている。外核は地球の磁場(地磁気)を発生させている。外核の上部に岩石質のマントルがあり、最後に地殻がある。直接観察したり試料を採取したりが不可能なので、地球の内核は調査が困難なことで知られている。最も実行しやすい中心核の調査手法は、地震によって発生する地震波からのデータ収集だ。今回の場合、研究チームは地震と核実験から得られる地震波データを用いて、内核の運動を分析した。
説得力のある結論
米国の南カリフォルニア大学(USC)と中国科学院の共同研究チームは、地球の内核が地表と比較して減速していることを発見した。この内核の運動の変化は、2010年頃に発生した。減速の原因は、液体の鉄からなる外核の撹乱と、マントルの一部から受ける重力の牽引作用だと、論文は示唆している。内核の自転速度が地球のマントルに比べて、わずかに「速い」から「遅い」へと約40年ぶりに変化していることが、今回の研究で明らかになっている。論文の共同執筆者で、USCドーンサイフ芸術文学科学カレッジ地球科学部の教授で学部長を務めるジョン・ビデールは「内核は数十年ぶりに減速していた」と述べている。「他の科学者チームも最近、類似の様々なモデルを提唱しているが、今回の最新研究が最も説得力のある結論を提供している」
ノイズに埋没
内核の動きが遅くなるほど、地球の自転速度に対する抵抗要素がより大きくなるという単純な理由から、内核の減速が1日の長さに影響を及ぼすことが予想される。1回の自転が24時間で1日を表すため、内核の減速は地球が1回転するのにより時間がかかることを意味する。だが、予想される変化は、1秒の何分の1にも満たないわずかな時間だ。「1000分の1秒のオーダーであり、海洋や大気の撹乱によるノイズに埋没しそうなほどで、気づくのが非常に困難だ」とビデールは説明している。地震波データ
今回の研究では、南大西洋に浮かぶ無人の火山列島であるサウスサンドイッチ諸島付近で1991年~2023年の期間に発生した121回の地震の地震波データを使用した。さらに、1971年から1974年にかけて米国、フランス、旧ソ連が実施した核実験のデータも使用した。ビデールは「この変化を示唆する震動記録を初めて見た時は困惑した」と話している。「だが、同じパターンを示している観測データがさらに20数件見つかったことによって、この結果は無視できないものとなった」
(forbes.com 原文)