海外での日本酒の人気が高まると、蔵元が出荷した覚えもない製品が海外で売られているなどという高級日本酒の偽物問題が増えてきた。日本酒メーカーにかぎらず、偽食品問題に悩む業界は多い。そこで各業界は、本物であることを証明するQRコードやICタグを製品に添付するなどの対策を講じているが、敵も負けてはいない。それらまで偽造してリンク先の偽サイトで「本物です」と主張するケースも現れている。
そこで、IT技術による正規品証明や横流し対策サービスなどを提供する日本流通管理支援機構は、2022年、ダイヤモンドの産地鑑定技術を応用した産地偽装の防止および検証サービス「産地の証印」の提供を開始したが、このほど、日本酒もその対象に含まれることになった。
これまで、和牛などの産地の特定はDNAを頼りに行われていた。しかし、特産農作物の種が海外に持ち出された場合、海外で栽培され偽日本ブランドとして販売されたものと本物とはDNAが共通なので産地の特定が難しかった。そこで「産地の証印」は、微小金属や同位体を調べることで、いつ、どこで作られたものかをかなり正確に特定できるようにした。この方法なら、日本酒のほか、レアメタルなどDNAが含まれない製品にも対応できる。また、複数の酒がブレンドされている場合も、それぞれの産地がわかる。
産地の証印は、英国政府の依頼でウクライナ産の穀物の鑑定を行ったこともある。ロシアが占拠したウクライナの畑で収穫した穀物をロシア産穀物で水増しして「ウクライナ産」として輸出し、ロシアの戦争活動資金にしているとの疑念が持たれていたからだ。鑑定の結果、ウクライナ、ロシア、周辺諸国から出荷された穀物の原産地が特定され、ロシアの目論見を抑制できたという。この産地特定技術には、抜き打ち検査で偽製品を差し押さえ、食品産業や食文化を守るだけでなく、戦争を抑止する力もあるということだ。
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