お金でしか買えないものもある──。例えば、12桁の資産をもつビリオネア(億万長者)のエリートクラス、いわゆる「1000億ドル・クラブ」会員である。2024年は世界で過去最高の14人がその資格を得た。23年の6人、20年のわずか1人から着実に増えている。そして彼らの多くが、テクノロジー起業家だ。
億万長者は全体で10年前に比べて120%も豊かになった。だが上記の14人の富は同じ期間に255%も増加しており、平均的な億万長者よりもよい結果を出している。彼らの純資産増加率は、インフレ率(32%増)や株式市場全体(S&P500は182%増)を優に上回る。この14人は合計で2兆ドルの価値があり、世界の億万長者2781人のうちたった0.5%で、億万長者全体の富の14%を保有している。
1億ドル(約1500億円)なんて、億万長者でも手が届かないと思われていたのは昔の話だ。フォーブスが初めて「世界の資産ランキング」を発表した1987年には、100億ドル(現在のドルで約270億ドル、24年のランキングでは69位)以上の資産をもつ大富豪は、西武鉄道グループの堤義明と、森ビル創業者の森泰吉郎の2人だけだった。ちなみに、それぞれの資産額は堤が200億ドル、森は150億ドルである。
ドットコム・バブルを経て、ビル・ゲイツという最初の1000億ドル長者が誕生した。アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾスは17年、自社株が時価総額1兆ドルへ迫ったときに2人目の1000億ドル長者となった。その後、イーロン・マスクやベルナール・アルノーも仲間入りを果たしている。メガ富裕層が急増しているいま、「1000億ドル・クラブ」の会員になることは、かつての“夢物語”ではなくなっているのだ。
1:純資産 2:資産の源泉 3:国籍 4:年齢
ランキングの基準
総資産を算出する際、給与のほか、株式の保有数、不動産、ヨット、美術品などを評価の対象にしている。純資産額は日々更新しており、本ランキングは2024年3月8日現在の株価と為替レートをもとに順位を算出した(詳細は以下のURLよりご覧ください):forbes.com/billionaires
1|ベルナール・アルノー
1:2330億ドル 2:LVMH 3:フランス 4:75歳2年連続で世界一に。ルイ・ヴィトン、ディオールなどを所有する高級コングロマリット「LVMH」が過去最高の売り上げを記録したおかげで、資産は2023年に10%も増加した。23年、LVMHは売上高940億ドルに対して純利益165億ドルを発表。今年1月には、LVMHの取締役に息子のアレクサンドルとフレデリックを加えることを提案している。
2|イーロン・マスク
1:1950億ドル 2:テスラ、スペースX 3:米国 4:52歳2021年11月に史上初の資産3000億ドルでトップに。それ以来、スペースXの評価額が80%も高騰して1800億ドルに達したり、X(旧ツイッター)の価格が22年10月に買収したときより70%ほど下がったり、テスラの株価が21年後半から57%下落したりするなかで。「世界一のビリオネア」の称号を、何度も得たり失ったりしている。
3|ジェフ・ベゾス
1:1940億ドル 2:アマゾン・ドットコム 3:米国 4:60歳アマゾン創業者は今年、資産と日照時間の両方で金字塔を打ち立てた。“eコマース業界の巨人”の株価が93%上昇したおかげで、ベゾスは800億ドルも裕福になった。一方、彼は米フロリダ州マイアミの島に1億5000万ドルの家を購入。30年暮らした米北西部シアトルを後にし、日当たりが良好で税金も安いフロリダに引っ越している。