音楽

2024.06.19 14:00

テイラー・スウィフトを苦しめた「大物マネージャー」が引退

スクーター・ブラウンとジャスティン・ビーバー(Photo by Kevin Mazur/Getty Images for YouTube Originals)

音楽業界で最も著名なアーティストマネージャーの1人であるスクーター・ブラウンは、家族と過ごす時間を増やし、エンタメ業界の大手HYBEアメリカのCEOとしての役割に専念したいことを理由に、正式にマネジメント業から引退することを明らかにした。

2008年に当時12歳のジャスティン・ビーバーの才能を発見し、彼をスターに育てあげたことで知られるブラウン(42)は6月17日、自身の会社のSBプロジェクトのマネージャーとしての仕事を辞めると宣言した。

ブラウンは、約2年前からマネジメントからの引退を考えていたが、昨年夏に「最大のクライアントであり友人でもある人物が、新しい方向を目指したいと言った」ことで、最終的に決断を下したと声明で述べている。

昨年8月、ブラウンがアリアナ・グランデやジャスティン・ビーバー、デミ・ロヴァートといった大物アーティストとの契約を解消したという噂が流れ、その後、グランデとロヴァートは新たな事務所のグッド・ワールド・マネジメントと契約した。また、ビーバーの妻のヘイリー・ボールドウィンが彼のマネジメントにおいて、より大きな役割を担うことになったと報じられた。

ブラウンは、20歳の頃にレコードレーベル、ソーソーデフでマーケティング部門の責任者としてキャリアを始動し、2007年にSBプロジェクトを立ち上げた。その翌年に彼は、ビーバーを発掘してマネージャーとなり、最初のレコード契約へと導いた。ブラウンはその後、グランデやロヴァートなどの代理人として業界で名を馳せていき、2013年にイカサ・ホールディングスを設立した。

イカサ・ホールディングスは、2019年にテイラー・スウィフトが初期作をリリースしたビッグ・マシーン・レーベル・グループを3億ドル(約470億円)で買収した。その2年後に韓国のBTSの所属元のHYBEが10億ドルを支払い、イカサ・ホールディングスを買収し、それ以来ブラウンはHYBEアメリカのCEOを務めている。

テイラー・スウィフトとの確執

ブラウンの会社がビッグ・マシーン・レーベルを買収したことで、ブラウンとスウィフトの間に大きな確執が生まれた。この買収によって、のスウィフトの過去曲の原盤権は、彼女のものではなくなった。「スクーターは、私が買う機会を与えられなかった人生の仕事を奪い去ったのです。私の音楽的遺産はそれを解体しようとした人の手に委ねられようとしています」とスウィフトは述べていた。

しかし、ここで重要なのはブラウンの会社が取得したのが、オリジナルのマスター音源のみであり、歌詞や楽曲そのものの権利ではないことだった。その結果、2019年にスウィフトは、自身のオリジナルアルバムをすべて再録音し、そのマスターを自ら所有すると発表した。彼女は2019年に最初の再録音アルバム『Fearless (Taylor's Version)』をリリースし、2021年に『Red (Taylor's Version)』、2023年に『Speak Now (Taylor's Version)』、同じく2023年に『1989 (Taylor's Version)』をリリースした。

ブラウンは、2013年に後のブランドの「Yeezy」の立ち上げにつながる、カニエ・ウェストとアディダスの契約を取り持った人物としても知られている。ウェストはナイキとの契約を破棄した後に、アディダスと契約を結んだ。このパートナーシップは2022年まで続いたが、アディダスは、ウェストが反ユダヤ主義的な発言をしたことを理由に彼との関係を解消した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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