現在、Eコマース(EC)で起業するのは簡単なことではない。ベテランのEC起業家であるゲイリー・ホアンは、「経済が厳しさを増しており、特にアマゾンでの販売活動が難しくなっている」と語る。「市場は成熟しつつあり、以前のようなシェアの奪い合いではなくなってきた。今年の売上成長率は横ばいだ」
ここで登場するのが人工知能(AI)だ。多くのEC事業者や新規参入を計画する人々が、付加価値の低い反復的な作業をAIに任せ、競争が激化する中で収益性を向上させようとしている。市場調査会社
スタティスタによれば、世界のEC市場は2027年までに5.8兆ドル(約910兆円)から8兆ドル(約1256兆円)以上に成長すると予想されている。最近のECトレンドに関するShopify(ショッピファイ)の
レポートでも、「俊敏性がこれまで以上に重要だ」と述べられている。
しかし、AIを利用するのは言うほどたやすくはない。新しいツールが豊富にあり、情報は溢れ、学習曲線があるとホアンは指摘する。
では、どのようにAIを活用すればよいのだろうか? ここでは、6月10~12日に無料のオンラインイベント「
7 Figure Seller Summit」を主催するホアンが語ったいくつかのアイデアを紹介する。
より賢い価格設定
多くの売り手は値上げを恐れている。売上順位を落としたり、競合他社に価格競争を仕掛けられたりすることを心配しているのだ。だが、AIが助けになる。たとえば、AIを活用したツール「
Prophecy」は、アマゾンにおける価格最適化を支援する。「需要に基づいて価格を調整するウーバーのサージプライシングのようなものだ」とホアンは説明する。「収益性の向上が目的であれ、ランキングの上昇が目的であれ、最適な価格を見つけてくれる」
より効率的な市場調査
AIを活用したツール「
Helium 10」を使えば、競合他社のリスティングを調べ、「レビューインサイト」機能を使って、競争するアイデアを得られる。ホアンは言う。「1000件のレビューがあるとしよう。従来の方法では、20ページのレビューを人間が読み、2つ星、3つ星、4つ星のレビューを見つけて、顧客が何を不満に思っているかを探る必要があった。それが製品改善の機会を見つける方法だったのだ。今では、ツールを活用してレビューをダウンロードし、それをChatGPTにアップロードすれば、競合他社のレビューの中にある最大の問題点を素早く教えて貰える」