北米

2024.05.29 11:30

衝撃的な値上がりを続ける米国の住宅価格 背景には何があるのか?

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米国の平均的な住宅購入費がとんでもなく高騰していることは、天才でなくとも知っているだろう。残念ながら、解決策を講じるには長い時間がかかるものとみられる。

米連邦準備制度理事会(FRB)セントルイス支部のデータによると、2020年第2四半期の平均的な住宅の価格は約37万1000ドル(約5800万円)だった。ちょうど新型コロナウイルスの世界的な大流行が始まった頃の話だ。

ところが2022年第2四半期には突如、平均価格が52万5000ドル(約8200万円)という驚異的な水準にまで高騰した。これはわずか2年間で41.5%という鼻血が出そうなくらい衝撃的な値上がりだ。それ以来、住宅価格はほぼ横ばいで推移しており、2022年の最高値を超えるには至っていない。

若者がマイホーム購入をあきらめかけているのも無理はない。親や親族からの相続に頼ることができるのは、一部の幸運な少数派だけだ。

問題の発端は、2007~09年にかけて広がった金融危機の影響で、新築住宅が建設されなかったことにある。当時の危機は、明らかに信用履歴の怪しい人々に金融機関が住宅ローンを提供していたために引き起こされた。その結果、複数の銀行が破綻に追い込まれたほか、数千億ドル(約数十兆円)もの税金をつぎ込んで救済された銀行もある。

その後に起こったことが、今の私たちの状況なのだ。政府が目をそらしてきたことの1つは、サブプライム(訳注:米国の低所得者向け住宅ローン)が破綻するまで、何年にもわたって無謀な融資が繰り返されたことだった。こうした危機をきっかけに、金融機関は住宅ローンを提供することに極めて慎重になったのだ。これにより、住宅購入希望者がローンを組むのが難しくなったため、住宅の建設事業は減速した。

米金融大手JPモルガンが2023年に公表した報告書では、米国の住宅戸数は過去15年間、毎年約30万戸ずつ需要を下回っているとされた。つまり、過去10年超の住宅建設不足を補うために、約450万戸の住宅を建設しなければならないということだ。連邦政府の記録を1993年までさかのぼってみても、国内で450万戸の住宅が新築された年はない。実際には、その半分の戸数にも達していない。

なぜこれほど多くの新築住宅が必要なのか? 米国では毎年、平均120万世帯が新たに誕生している。他方で、毎年約20万戸の住宅が取り壊されている。こうして数字を計算してみると、現在の住宅危機は長い間進行していたことが分かる。それは、建設業者が24時間365日働いたとしても、問題を解決するのに長い時間がかかることを意味する。銀行が融資の条件を緩めたとしても、状況は大して変わらないだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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