「強硬路線」とは、2014年にロシアがクリミアを強制併合したように、中国が情報・影響工作によって台湾のなかの対立を極大化させて反乱や内戦を引き起こした後、非正規の部隊を中国から送り込んで親中政権を台湾に樹立させるやり方だという。松村氏は「中国はその場合、米国が介入しないよう、在日米軍が使えない状態に持ち込みたいはずです」と語る。日本の一部にある反米感情を刺激したり、日本の本土と沖縄県との間にある安全保障を巡る意見の対立を煽り立てたりすることが予想されるという。
松村氏は「中国がどのような情報・影響工作を狙っているのか、大きな構図で知る必要があります」と語ると同時に、「簡単に分断を許さない、健全な世論の形成が必要です」と語る。日本では最近、陸上自衛隊の第32普通科連隊が4月5日、X(旧ツイッター)の部隊公式アカウントで「大東亜戦争」という用語を使って投稿したことで、賛否両論が渦巻いた。それぞれ、「侵略された国々のことも考えるべきだ」「地理的に太平洋戦争だけでは足りない」などの論拠を上げたが、なぜ、対立する人々がそのような主張をするのかについて考え、歩み寄ろうとする論調はほとんどなかった。外務省の元幹部は「中国が日本世論の分断を狙うなら、大東亜戦争は格好の標的だろう」と語る。
松村氏は「権威主義国が民主主義国に対して情報・影響工作を仕掛けてくる場合には、世論の分裂などの社会の脆弱性につけこんで来ます。日本のような民主主義国がこれに対して耐性をつけるためには、むしろ健全な議論を活発化して、つけこまれる前に議論を尽くしておくことが大切なのです。今の岸田文雄政権が本当に議論を尽くそうとしているのか、むしろ論点をはぐらかしているのではないかという点が気になるところです」と語った。
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