経済・社会

2024.05.02 08:15

中国が米国の選挙介入を計画? 日本も気をつけたい「世論の弱点」とは

ブリンケン米国務長官(Photo by Johannes Neudecker/picture alliance via Getty Images)

「懐柔路線」とは、台湾のなかで、権威主義的な親中政権を樹立させ、将来的な「平和的統一」に持ち込もうとする方針だ。松村氏は、その場合の中国の情報・影響工作の特徴として「台湾と日米との間を裂くような工作を展開するでしょう」と予測する。台湾に対して、米国が抱える人種差別や社会的格差の問題を大げさに伝え、「中国と平和統一したほうがマシだ」と思わせるやり方だ。日本と台湾との間にある歴史問題や尖閣諸島領有問題にも焦点を合わせてくるかもしれない。
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「強硬路線」とは、2014年にロシアがクリミアを強制併合したように、中国が情報・影響工作によって台湾のなかの対立を極大化させて反乱や内戦を引き起こした後、非正規の部隊を中国から送り込んで親中政権を台湾に樹立させるやり方だという。松村氏は「中国はその場合、米国が介入しないよう、在日米軍が使えない状態に持ち込みたいはずです」と語る。日本の一部にある反米感情を刺激したり、日本の本土と沖縄県との間にある安全保障を巡る意見の対立を煽り立てたりすることが予想されるという。

松村氏は「中国がどのような情報・影響工作を狙っているのか、大きな構図で知る必要があります」と語ると同時に、「簡単に分断を許さない、健全な世論の形成が必要です」と語る。日本では最近、陸上自衛隊の第32普通科連隊が4月5日、X(旧ツイッター)の部隊公式アカウントで「大東亜戦争」という用語を使って投稿したことで、賛否両論が渦巻いた。それぞれ、「侵略された国々のことも考えるべきだ」「地理的に太平洋戦争だけでは足りない」などの論拠を上げたが、なぜ、対立する人々がそのような主張をするのかについて考え、歩み寄ろうとする論調はほとんどなかった。外務省の元幹部は「中国が日本世論の分断を狙うなら、大東亜戦争は格好の標的だろう」と語る。

松村氏は「権威主義国が民主主義国に対して情報・影響工作を仕掛けてくる場合には、世論の分裂などの社会の脆弱性につけこんで来ます。日本のような民主主義国がこれに対して耐性をつけるためには、むしろ健全な議論を活発化して、つけこまれる前に議論を尽くしておくことが大切なのです。今の岸田文雄政権が本当に議論を尽くそうとしているのか、むしろ論点をはぐらかしているのではないかという点が気になるところです」と語った。
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