1980年から2020年までにリリースされた、5つの洋楽ジャンル(ポップス、ロック、ラップ、R&B、カントリー)の楽曲1万2000曲を比較した研究で、これらのジャンルの楽曲は、年々繰り返しが多くなり、歌詞の内容がよりシンプルになっていることが判明した。この研究は、米国時間3月28日に学術ジャーナルScientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)で公開された。
研究チームは、この変化が他の作業をしながら音楽を聞く人が増えた結果かもしれないと考えている。ただし、楽曲の歌詞は時間の経過とともに、よりパーソナルに、よりエモーショナルになっている。すべてのジャンルで怒りに関連する言葉が増加し、ラップにおいては肯定的な歌詞と否定的な歌詞の両方が増加し、R&Bやポップス、カントリーにおいてはネガティブな歌詞が増加した。
研究チームが歌詞検索サイトのGenius(ジーニアス)で調べたところ、ロックの歌詞は古いものほど多くのリスナーに閲覧される傾向があった。一方、カントリーでは新しい曲の歌詞のほうが古い曲よりも多く閲覧されていた。
最も歌詞を気にしているのはラップのリスナーで、次いでR&Bのリスナーだった。研究者によれば、歌詞は他の3つのジャンル(ポップ、ロック、カントリー)の発展の指標としてはあまり意味がない可能性があるという。
研究チームはまた、歌の歌詞は歴史的に、比喩やイメージのような詩的な表現の使用により、文学作品の一形態とみなされてきたと指摘している。ボブ・ディランは、「米国の歌の伝統の中で新たな詩的表現を生み出した」として、2016年にノーベル文学賞を受賞した。
ヒット曲は、年々短くなっていることも指摘されている。ワシントン・ポストのレポートによると、Billboard Hot 100(ビルボードホット100)の平均的な曲の長さは、1990年代には約4分だったが、2020年代には3分程度まで短くなっている。この背後にはストリーミングの普及が指摘されている。Apple Musicのようなプラットフォームは、再生1回ごとにアーティストに報酬を支払っており、Spotifyなどのサービスは、報酬を得るのに必要な最低限の再生時間を決めている。
Spotify傘下の分析プラットフォームEcho Nest(エコーネスト)のデータによると、リスナーの約24%が最初の5秒以内に曲をスキップし、約50%が曲が終わる前にスキップしているという。
全米レコード協会(RIAA)のデータによると、ストリーミングサービスからの収入は、2015年に初めてデジタル・ダウンロードを上回り、全収入の34.3%を記録。音楽業界にとって最大の収入源となった。この数字は2018年には75%に増加した。
ビルボードは、TikTokのようなSNSを通じた音楽の聴取が増えたことも、ユーザーが短い曲を好むようになった原因の一つかもしれないと報じている。
(forbes.com 原文)