田舎道を通り抜けると、目を引く特徴的な白い建物。明るく開けた庭や散歩道。つい入ってみたくなるカフェや雑貨店。少し歩くと高台でヤギが草を食べている。
1万坪におよぶこの一帯は「ドロフィーズキャンパス」と呼ばれ、洗練された空気感が広がる。
手掛けているのは、地元浜松市の注文住宅を請け負う建設会社の都田建設。建設会社でありながら駅のリノベーションやカフェ経営も行い、ドロフィーズキャンパスという地域に根ざしたまちづくりも展開する。
約1万坪の広大な土地を活用したドロフィーズキャンパス。北欧をモチーフにしたカフェ、インテリアショップ、ホテルなどが点在し、歩くだけでも十分楽しめる
なぜ都田町を選んだのか?
ドロフィーズキャンパス構想がスタートしたのは、2012年。2007年に社長に就任した蓬台(ほうだい)浩明氏が、新たに都田町でまちづくりをしたいと考えたのだ。その想いには、大きく3つの背景があった。1つ目は従業員の声。若いスタッフに「今後、会社を大きくしていく中でどんなことをやってみたいか」と夢を聞くと、「カフェをやりたい」「インテリアショップやホテルをやりたい」など、店舗事業をやりたいという夢や想いが聞こえてきた。彼らがやりたいことを実現できる会社にできないか、と妄想を膨らましていた。
2つ目は、顧客の声だ。当時、注文住宅をメインの仕事として受けていたが、それ以上のサポートができていなかった。注文住宅は住む側の視点で考えると、家が建つだけでは終わらない。
例えば、庭がある家では造園が必要になり、インテリア、家具、食器なども家に合わせてデザインする必要がある。田舎の広大な土地に参考になるモデルルームや庭があれば、より暮らしを具体的に想起できるだろうと考えた。
3つ目は、地域の声だ。1999年に蓬台氏が社員として入社した頃から、若者が都田町から離れて過疎化が進み、高齢者中心の町になっていった。少子高齢化の影響で町が衰退していくのを目の当たりにしていたのだ。跡継ぎがいなく空き家になる家も増え、住民からも空き家の相談も増えていたという。
こうして、「夢物語かもしれないが、都田町に小さな街のようなエリアをつくりたい」と考えた。そこで皆の夢を叶えることで若い人たちが集まり、地域が盛り上がるきっかけになるのではないか、と。
ドロフィーズの名前の由来は、Dream(夢)、Love(愛)、Freedom(自由)、’s(仲間)。それらを組み合わせた造語である。ネーミングからも、実現したい世界観が伝わる。