ChatGPTの弱点を明らかにするために、ポルトガルの旅行代理店ツアースキャナーの共同創業者であるギヨーム・ピカールは、「人気の観光施設を訪れるための節約術」を具体的に尋ねる複数のクエリを入力した。ChatGPTの回答は「タイミングを見計らうのが大事」から「年間パスを検討する」までさまざまだったが、いくつかの回答は問題のあるものだった。
臨時ツアーガイドになる
観光施設の料金を抑える手法として、ChatGPTは次のような提案をした。 「観光施設によっては、観光客がボランティアで臨時ガイドをすることができます。時間と知識を提供する代わりに、入場料が無料になったり、特別なサービスが受けられるかもしれません」このような手法がすぐさま問題を引き起こす可能性があることは容易に想像がつく。ピカールは、標準的なツアーガイドと比較すると、観光客はガイドの十分な訓練を受けていない可能性が高いと指摘する。例えば、英ロンドンでガイドの認証を得るには1年半かかる。同時に、疑うことを知らない観光客に自発的なツアーを提供すれば、多くの時間を費やすことになり、その結果、のんびりとした休暇が台無しになる可能性が高い。このようなアドバイスの代わりに、ツアースキャナーは、閑散期や空いている時間帯に観光に参加することを勧めている。
プロのスキルを提供する
ChatGPTが示した2つ目のアドバイスは、個人的な才能を利用することをベースとしている。 「入場料と引き換えに、あなたのスキルやサービスを提供しましょう。例えば、あなたがプロの写真家なら、観光施設の宣伝写真を撮ることを申し出ることができるかもしれません」才能の有無にかかわらず、入場料の代わりとしてこのような提案をすると「笑われるか、奇妙な目で見られる可能性が高い」とピカールは指摘する。人気のある観光地はすでに質の高い写真を十分持っていると思われるが、この策には地元の人々から仕事を奪うというデメリットもあり、多くの発展途上国で目にする観光客と現地の人々との貧富の格差の拡大につながる可能性がある。ピカールは代替案として、観光局に相談して観光客があまり訪れない別の観光地を探すことを提案する。
危険な移動手段を取る
最後に、ピカールを特に悩ませた提案があった。交通費を抑えるために、ChatGPTは次のようなアドバイスをしたのだ。「その地域で安全かつ合法であれば、交通費を節約するためにヒッチハイクや他の観光客との相乗りを検討してください」確かに費用対効果は高いが、ヒッチハイクでは過去何十年もの間に、多くの人が非常に危険な目にあったり、命を落としたりしてきた。すでに存在する危険に加え、意思疎通がうまくいかなかったり、文化の細かな部分についての知識が不足していたりすることで、危ない状況に陥るおそれもあり、交渉がうまくいかなかった場合、見知らぬ場所で立ち往生するリスクもあるとピカールは指摘する。ヒッチハイクを試みる代わりに、ピカールは徒歩や自転車、公共交通機関の利用など確実に信頼できる移動手段を勧める。
確かにAIは社会で役割を担うようになっているが、チャットボットがまだ完璧とは言い難いことは明白で、特に旅行のアドバイスに関しては、旅に精通した実際の人間と話すのが最善の策だ。真に思い出に残る旅行を計画するためには、AIが生成したアドバイスはすべて疑ってかかるか、一番よいのは、実際の旅行の専門家に、人間的見地から、できるだけ煩わしさのない旅にしたいと相談することだ。
(forbes.com 原文)