教育を受ける時間と長生きの関連性は以前から知られていたが、この種のものとしては最大規模となる今回の研究は教育がおよぼす影響を初めて定量化した。
英医学誌ランセットのザ・ランセット・パブリック・ヘルスに発表されたノルウェーの研究者らの研究結果によると、年齢や性別、居住地、出自にかかわらず、教育を1年受けるごとに死亡リスクが平均約2%減少する。
また、先進国や発展途上国など発展段階が異なる国の間で大きな違いはないことも明らかになった。つまり、豊かな国、貧しい国関係なく、教育を受ければ同じだけの死亡リスクの減少を得られるということになる。
ノルウェー科学技術大学(NTNU)の世界健康不平等研究センター(CHAIN)の責任者で、この研究の共著者のテリエ・アンドレアス・エイケモ博士は「教育は健康面で有益であるだけでなく、それ自体が重要だが、教育の恩恵の大きさを定量化できるようになったことは大きな進展だ」と研究の意義を語った。
研究によると、教育を6年間(初等教育にほぼ相当)受けると死亡リスクが13%減少し、12年間(ほぼ高校卒業程度)受けると24%減少。18年間(修士課程終了にほぼ相当)受けた場合は34%減少するという。
NTNU社会・政治学部の科学関連コーディネーターで、共著者のミルザ・バラジは「教育を多く受けることは、良い仕事と高い収入、医療の受けやすさにつながり、自身の健康管理にも役立つ」と説明。「高度な教育を受けた人はまた、多くの人の健康や寿命に役立つような社会的・心理的リソースを開発する傾向がある」とも指摘した。
教育を受けることで得られる恩恵は若い人ほど大きいが、50歳以上さらには70歳以上の人も健康面で恩恵を受けた。
一方で、研究者らは教育を受けないことを他の危険因子が健康におよぼす影響と比較した。その結果、教育をまったく受けないことの影響は、1日10本の喫煙、あるいは1日5杯の飲酒を10年続けるのと同等であることがわかった。
「生命を犠牲にしている根強い不平等をなくすために、世界中で今以上に良い教育をもっと受けられるよう社会的投資を増やす必要がある」とバラジは付け加えた。
この研究は、ノルウェー研究評議会とビル&メリンダ・ゲイツ財団の資金援助を受けたもので、59カ国の600以上の研究結果から抽出した1万以上のデータを分析した。
米ワシントン大学医学部の保健指標評価研究所(IHME)の研究者で共著者のクレア・ヘンソンは「教育格差の是正は死亡率の差を縮めることを意味し、国際的な取り組みを展開して、貧困と予防可能な死亡の連鎖を断ち切る必要がある」と指摘。
「死亡率の不平等を減らすためには、人々が教育を受ける機会を促進する分野に投資することが重要だ。こうした投資は、すべての国の人々の健康に良い効果をもたらすことができる」と教育の重要性を強調した。
(forbes.com 原文)