紅海で商船攻撃相次ぐ 海運大手が航行見合わせ、世界貿易に影響も

スエズ運河を通る貨物船(byvalet / Shutterstock.com)

紅海で、イエメンの親イラン武装組織フーシ派による商船への攻撃が相次いだことを受け、マースクやハパックロイドなど、海運大手の多くが同海域の航行を見合わせている。

香港のOOCLと台湾のエバーグリーン(長栄海運)は、イスラエル発着の貨物の受け入れを一時停止した。紅海はアジアからの船舶がエジプトのスエズ運河を通過するための重要な航路。同ルートの一時停止は、世界貿易に遅れをもたらす可能性がある。

直近では18日、MSCの貨物船とノルウェーの石油タンカーが無人艇(水上ドローン)で攻撃された。いずれもフーシ派が犯行声明を出した。石油タンカーの乗組員にけがはないもよう。

15日には、ハパックロイドとMSCの貨物船各1隻がフーシ派の無人機(ドローン)によるミサイル攻撃を受けた。運航会社によると、乗組員にけがはなかった。フーシ派はMSCの別の船舶も標的にしたことを認めたが、命中しなかったとみられる。この前日にはマースクの船舶も狙われた。

エジプトのスエズ運河庁のオサマ・ラビ長官は17日、スエズ運河の航行は「通常通り正常に」流れていると説明しつつも、11月19日以降、55隻の船舶が南アフリカの喜望峰を回るルートに変更したと明らかにした。

フーシ派は11月19日、紅海でバハマ船籍の貨物船を乗っ取り、イエメン西部の港町ホデイダに移動させた。ラビ長官は、55隻という数は、同期間にスエズ運河を通過した2128隻に比べると極めて少ないとの見解を示した。

ラビ長官はまた、スエズ運河はアジアと欧州を行き来する船舶にとって最速かつ最短の航路だと強調。出発・目的地にもよるが、スエズ運河を経由することで所要日数は9日から2週間短縮できるという。喜望峰を回るルートをとると、輸送コストは10〜15%かさむ。

紅海を航行する商船へのさらなる攻撃を阻止するために、複数の国の海軍部隊が活動を続けている。ロイド・オースティン米国防長官はこのほど、共同パトロールなど紅海の航行の安全を確保するための多国間の取り組みを発表した。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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