ビジネス

2023.12.21 14:00

企業が今知るべき「謝罪の経済学」とは

ベンジャミン・ホー|バッサーカレッジ教授(Mike Okoniewski/Vassar College)

5分類の「謝罪」

──謝罪を5つに分類していますね。
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ホー:まず1つ目が、最も容易で、企業や政治家が多用する「共感の謝罪・部分的謝罪」だ。「お気の毒です」という言葉で相手への共感を示す。責任は取らない、弱い謝罪だ。
 
次が「言い訳の謝罪」だ。「申し訳ありません。でも、なすすべがありませんでした」と、責任を回避する。1つ目も2つ目も「悪い」謝罪だが、株価には良さそうだ。

3つ目が、金銭などの「具体的な代償による謝罪」だ。「申し訳ありません。このお金がお詫びのしるしです」と、具体的な形で責任を取る。ウーバーの実験が一例だ。
 
4つ目が「改善を約束する謝罪」だ。「申し訳ありません。今後は向上に努めます」と責任を取る、本格的な謝罪だ。ただ、約束を破ったら、もっと風当たりが強くなる。
 
5つ目が、過去の行いに対して責任を取り、「申し訳ありません。私が台無しにしてしまいました」と、「へりくだる謝罪」だ。自分を無能に見せるため、株価の下落を招く。

──長年にわたる研究から、「良い謝罪に近道はない」という教訓を得たそうですね。
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ホー:ホロコーストなど、歴史的事件に対する謝罪を見てもわかる。効果的な謝罪には長い年月がかかり、大きな痛みと代償を伴う。
 
ひるがえってフェイスブックの親会社、メタのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は一時期、プライバシー侵害の問題などで謝罪に追われたが、米経済誌から「謝罪マシーン」と命名された。機械のように謝罪の常套句を繰り返すだけで、実感がこもっていなかったからだ。組織にとって、謝罪は厄介だ。
 
まず、どのような謝罪が信頼に値するのかを考えるべきだ。人間味と有能さのどちらを見せたいのか? 受け手によって、「信頼性」の定義は違う。謝罪には、脆弱性というリスクが伴うことも認識すべきだ。


ベンジャミン・ホー◎バッサーカレッジ行動経済学教授。マサチューセッツ工科大学(MIT)で工学修士号、スタンフォード大大学院で政治学・教育学修士号、経済学博士号を取得。モルガン・スタンレーのアナリストやホワイトハウスの経済諮問委員会のエコノミスト経験も有する。

インタビュー=肥田美佐子

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