10月27日にiScience誌に掲載された研究によると、日本の山梨大学や理化学研究所などの研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)内でマウスの受精卵が着床前の「胚盤胞」と呼ばれる状態まで成長することを確認したという。この研究は、哺乳類が宇宙でも繁殖できる可能性を示した最初のものだという。
この実験は、宇宙ステーション内の低重力や高放射線の環境が初期胚の発育を妨げるかどうかをテストするために計画された。研究チームは、地球上で妊娠したマウスから初期段階の胚を取り出し、冷凍保存した後、スペースX社のロケットでISSに運んだ。
山梨大学の若山照彦教授がニュー・サイエンティスト誌に語ったところによると、マウスの胚は、微小重力下で4日間培養された。宇宙では放射線レベルが高くなるが、地上に戻った胚を調べたところ、DNAが損傷した兆候は見られず、重力の違いによる成長の差もなかったという。
この実験は、初期胚の発生に重力が大きな影響をおよぼさないことを明確に示し、哺乳類の胚が「宇宙で成長できる可能性」を示したと研究チームは述べている。
これまでISSでは、ミバエや魚、ミミズ、ヒキガエル、マウスなどの標準的な実験動物を使ったさまざまな実験を通じて、高放射線と低重力環境の影響が調査されてきたが、今回の研究は、宇宙空間で初めて哺乳類の胚が培養され成長が確認された事例だという。
研究チームは今後、宇宙で培養した胚盤胞が着床し、実際に子どもが生まれるかを確かめる実験に取り組みたいと述べている。
観光を目的とした宇宙開発への取り組みが活発化し、月での有人基地の設置や火星への訪問という大胆な計画を掲げた有人宇宙ミッションに対する政府の熱意が再燃する中、宇宙で人が繁殖できるかどうか、またどのように繁殖できるかを見極める研究の重要性はますます高まっている。
現状ではまだ誰も宇宙でセックスをしたことがないとされており、妊娠中の女性宇宙飛行士のミッションへの参加も禁止されている中で、宇宙での子づくりはまだ現実の課題とはなっていない。しかし、宇宙がより多くの人に開放され、特に観光客に開放されるようになれば、その課題の現実味は増すことになりそうだ。
(forbes.com 原文)