IFJ Institute of Young Enterprisesのデータによると、スイスで今年上半期に設立されたスタートアップの数は前年同期比4.5%増の約2万6000社で、過去最高を記録した。
スイスでは、特にハイテク分野で評価額が10億ドルを超えるユニコーン企業が多く誕生している。最近の例では、物流ソフトウエアの「Scandit」やクリーンテック企業の「Climeworks」、セキュリティ企業の「SonarSource」、インターネットプライバシーに特化した「Proton」などが挙げられる。人口当たりのユニコーン企業の輩出数は欧州最多だ。
スイスのVC、ウィングマン・ベンチャーズの共同創業者であるパスカル・マティスは、同国でスタートアップが活発な理由は主に2つあると言う。
「1つは、スイスの若者が大手銀行に就職するよりも、早い段階から起業することに自信を持つようになっていること。もう1つの重要な点は、スイスの理工系大学に世界中から優秀な学生が集まっていることだ。スイス連邦工科大学(ETH)チューリヒ校と同大ローザンヌ校(EFPL)を合わせると、マサチューセッツ工科大学(MIT)などの米国の大学よりも多くの学生を集めている」(マティス)
ロボット工学や産業オートメーション、人工知能(AI)、コンピュータビジョン、気候科学などの分野で世界的に注目を集めるスイスのスタートアップの多くが、両校から誕生している。
高度な技術を持つ学生を数多く輩出していることで、世界的なテクノロジー企業がスイスに拠点を構えるようになり、同国における技術エコシステムをさらに強化している。古くからスイスに進出しているIBMに加え、近年ではグーグルもスイスで5000人の開発者を雇用している。他にも、ディズニーやエヌビディア、メタ、華為技術(ファーウェイ)、インテルなどが同国に進出している。
その結果、スイスの国際的評価は高まっており、最近ではグローバル・イノベーション・インデックス(GII)で13年連続首位を獲得した。これまでは、物価の高さがスタートアップにとって障壁となってきたが、欧州の他の都市でも物価が上昇したことで差は縮まっている。
またマティスによると、スタートアップが税制や法制度に対応する上で、スイスの当局は非常に協力的だという。