実験は、千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」の公道にて、2025年3月まで行われる。このシステムを提案した東京大学大学院新領域創成科学研究科の藤本・清水研究室の話では、道路のコイルの上に10秒間いれば1キロメートル走るだけの電気が充電されるとのこと。車が停止することが多い交差点などに送電コイルを点々と設置するだけで、街中ならそれだけで用が済む感じだ。
今回の実験では、一般的なEVに受電コイルを取り付けて走らせる。そこで、いろいろな車両に対応するよう供給電力のコントロール、車がいないときには送電コイルに送られる電力を最小限にしておき、車が来るとそれを感知して送電を開始するシステム、道路に埋め込んだ送信コイルの耐久性などの検証が行われる。これらは実用化に向けた「標準化」のために必要な要素だ。
走行中給電の開発は各国でさかんに進められている。今年5月、トヨタ自動車がイスラエルの企業と共同で開発したシステムでは、プラグインハイブリッドSUVのRAV4を100時間連続で約2000キロメートル走らせることに成功している。スウェーデンではすでに走行中給電が可能なハイウェイの整備を開始している。しかし東京大学は、さらに一歩進んだシステム研究も同時に進めている。
今回の実証実験には、日本精工、東洋電機製造、ブリヂストンなどの企業が多く関わっているが、東京大学ではそれらの企業とともに、タイヤにモーターと受電装置を組み込んだ世界初の「インホイールモーター」を開発中だ。エンジン車のように大きなモーターを搭載してプロペラシャフトでタイヤを回転させるのではなく、4本のタイヤ自体が回転するという仕組み。そこに給電用コイルを埋め込むことで、道路の送電コイルとの間はつねに一定の最小距離が保たれ、給電効率は最大になる。
現在、EVシフトに向けて充電施設の整備が進み、自動車をとりまく景色が大きく変化しているが、走行中給電が実用化される数年後には、また大きく景色が変わることになるだろう。
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