そこで農林水産庁は、メタンを削減する飼料添加物の評価基準を策定して飼料メーカーに開発を促している。早ければ2024年から農水省指定の添加物の販売を見込んでいるが、その対象は抗菌性物質製剤。つまり薬だ。そのため安全性や効果の審査が厳しく行われている。
それに対して「カギケノリ」という海藻が注目されている。もともと天然の食材なので、環境負荷も危険性も低い。オーストラリアでは、カギケノリを0.2パーセント餌に混ぜるだけで牛のゲップのメタンを98パーセントまで減らすことができたという報告がある。ニュージーランドではカギケノリ養殖のスタートアップが陸上養殖技術の開発を進めている。
一方、日本では、微細藻類の大量培養技術を持つアルヌールが、日本産カギケノリの養殖への道を切り拓いた。カギケノリは日本沿岸に生息しているが、天然のものだけではとても量が足りない。そこで養殖となる。アルヌールは鹿児島県の山川町漁業協同組合、神戸大学の川井浩史博士の協力で研究を行い、培養株の確立に成功し、種苗の生産を可能にした。今後は、海と陸上の両方で日本初のカギケノリの養殖、それを使った牛の飼料の販売を目指すとのこと。
アルヌールはまた、山川町漁業協同組合と共同でThe 「Blue COWbon Project」を立ち上げ、海洋でのカギケノリの養殖を通じて「本来の海を取り戻す活動」を始めている。近年、日本沿岸では海水温の上昇により海底の藻類が激減する「磯焼け」が発生し、プランクトンが減って漁獲量が落ちてきている。カギケノリを養殖すれば、藻場が回復し魚も戻ってくる。さらに、海が大気中の二酸化炭素を吸収するブルーカーボンも増加すると、いいことづくめだ。同プロジェクトでは全国の自治体や企業の参加を募っている。畜産と漁業が手を組む、全国規模の持続可能な仕組みが見えてくる。
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