19日に発表された論文によれば、ミシシッピ州では2016~22年に367人の乳児が先天梅毒と診断された。うち92.6%が低所得者向けの医療保険制度「メディケイド」を利用、58%が地方部出身で、25%が母親にアルコール・薬物依存などの物質使用障害があった。
期間中の症例数は白人で27倍、黒人では11倍に増えていたが、全体の70%以上が黒人だった。研究チームは、今回の研究結果により「梅毒といった深刻だが予防可能な感染症の伝染が、貧困や制度的人種差別によって助長されている」ことが浮き彫りになったと指摘している。
先天梅毒はオハイオ、ミズーリ、ミネソタの各州の一部地域でも増加している。ミズーリ州では昨年の症例数が1994年以降で最多となった。ミネソタ州の症例数は2022年に42%増加、オハイオ州の症例数は2019年から2021年にかけて158%増加した。
CNNによると、アリゾナ、ニューメキシコ、ルイジアナ、テキサスの各州でも症例が増加しており、南部の症例は2016年から2021年の間に432%増加。米疾病対策センター(CDC)のデータによれば、全米の症例数は2012年の324件から、2021年には2677件に増加した。
梅毒は、治療せずに放置すると、潰瘍や発疹のほか、脳や神経、目、心臓への損傷を引き起こす。多くは性的接触によって感染し、抗菌薬のペニシリンでほぼ必ず治癒する。母親から胎児に感染する可能性があるが、出産前の30日間に治療を受ければ、母子感染はたいてい防げる。先天梅毒の赤ちゃんは、早産児や極低出生体重児となる可能性も高まる。
ネブラスカ大学医療センター公衆衛生学部のアリ・カーン学部長は3月、CNNに対し、先天梅毒は「保健制度の度重なる失敗」の結果だと指摘した。症例増加の要因としては、性感染症対策の予算不足、公衆衛生プログラムにおける適切な人材の不足、医療保険の未加入者が散在する状況が挙げられている。
メディケイドでは、妊娠初期の妊婦に梅毒検査を義務づけているが、妊娠中・後期や出産時の検査は各州に委ねられており、方針は州によって異なる。CNNによれば、妊婦の男性パートナーなど、障害がなく子どものいない成人にメディケイドの適用を認めていない州では、先天梅毒の増加率が特に高くなっているという。
(forbes.com 原文)