なぜ株価が下落したのか。途切れることのない世界各国からのニュースを処理しながら株価の動きを説明するのはいつも骨折り損のようなものだが、アップルの株価下落の犯人として最も指摘されたのは中国だった。中国政府が政府機関や国有企業の職員によるiPhoneの使用を禁止する方向に傾いているとさまざまなメディアが伝えていた。
この件に関しては、iPhoneの販売の地理的分布を念頭に置く必要がある。現在、アップルはiPhoneの5分の1を中国で販売している。ゆえに、アップルの中国での成長を制限しようとする中国当局の動きは当然、同社の株価に極めて大きな影響を与えることになる。アップルの時価総額急落から学ぶべきことはいくつかある。
1つは「唯一の閉ざされた経済は世界経済である」ということだ。これは、ノーベル経済学賞を受賞した故ロバート・マンデルが多くの教え子に言っていた言葉だ。私たちが世界経済と呼んでいるものを構成する個人の財産はかなり密接に結びついているという事実は避けて通れない。別の言い方をすれば、中国が風邪をひけば、米国も同じように風邪をひく。
中国の成長に大きく依存している企業はアップルだけではない。米コネチカット州ファーミントンに本社を置くオーチス・エレベーターが販売するエレベーターの3分の2は、高層ビルが密集する中国の都市に設置されている。ワシントン州シアトルに本社があるスターバックスは中国本土に6500店舗を展開している。株主への高リターンを目指す多国籍企業にとって中国の存在感は大きく、しかもその存在感は増している可能性がある。