2023.09.12 13:30

地球温暖化がフランス観光を変える? 旅行客は南部から北部へ

仏パリのトロカデロ庭園の噴水で暑さをしのぐ市民と観光客(Getty Images)

フランス政府と同国の主な観光協会は、夏期の観光シーズンの開始は好調だったが、旅行者の行動パターンが気候変動の影響を受け始めている兆候があると発表した。

フランス観光省、フランス観光開発機構、観光局協会ADNツーリズムが共同で発表したプレスリリースによると、世論調査やホテル稼働率のデータから、この夏、気温が比較的低かった同国北部では観光客が増加し、熱波に見舞われた南部では観光客が減少していることがわかった。観光開発機構は、今年はフランス北部が旅行者にとって魅力的になった一方で、南部の人気は低下しており、昨年と比較すると旅行者の地理的分布の「バランスが取れている」との見方を示した。

宿泊施設の状況に目を向けると、フランス全体の6月と7月のホテル稼働率は昨年とほぼ同水準の74%に達した。地域別で見ると、北西部の同期間の客室稼働率は昨年比で6%上昇。他方で、同国南部に位置する地中海沿岸地域の東部と西部の客室稼働率は、それぞれ4%と5%低下した。

こうした変化について各観光協会は、気候変動が主な原因だと断言するには至っていない。だが、観光開発機構が発表した調査では、天候が主な原因である可能性が高いと強調されている。「目的地や滞在期間の選択に、気象学的な影響がある可能性も指摘できる。実際、2022年の例外的な天候は、休暇先の選択に影響を与えた可能性がある。しかし、結論を導くには時期尚早だ。この点についてはこうした傾向の肯定と否定を含め、シーズン終了後に明確な視点を得ることができるだろう」

フランスは昨年夏、記録的な高温と歴史に残る山火事に見舞われた。今年の夏もすでに記録的な暑さとなっており、フランス気象局は先月下旬、国内南部に猛暑警報を発令した。

各観光協会によると、気候変動の影響だけでなく、見過ごされがちな国内の地域に旅行客を誘致するためのマーケティングや観光キャンペーンが大きな成果を上げているという。仏経済紙トリビューンは、同国では歴史的に観光客の80%が国土の20%に集中していると指摘している。過剰観光と気候変動が懸念される中、政府は観光客の分布を均等にする努力を支援してきた。

そのほかにも懸念材料はある。今回の発表の中で引用された世論調査会社ユーガブの調査からは、フランスの回答者の74%が国内旅行の計画を控える理由として物価高を挙げたことが明らかになった。

同時に、海外旅行もそれを補うほどに増えている。例えば、7月1日~20日の間に飛行機でフランスに到着した米国人の数は、新型コロナウイルス流行前の2019年の夏の同時期と比べて5%増加した。

観光開発機構のカロリーヌ・ルブシェ最高経営責任者(CEO)は次のような見解を示した。「時が経つにつれ、フランスの国際的な魅力は確認され、強化されつつある。一方で、海外旅行への回帰やインフレへの適応、気候の変化、あらゆる季節にあらゆる地域を深く発見したいという願望により、国内の旅行者は過渡期にある」

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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