欧州

2023.09.11

パリ五輪のAIカメラによる監視計画、プライバシーへの懸念高まる

Svet foto / Shutterstock.com

2024年夏季オリンピックの開催を控えたパリでは、フランス政府が前例のないレベルのテクノロジーによる監視を、街全体で実施している。人工知能(AI)を搭載した数百台のカメラが群衆や公共空間を監視し、不審な行動を検知すると当局にアラームが通知される。推進派がこれらのシステムはテロ攻撃を防ぐと主張する一方で、プライバシー擁護派はフランスにおける技術を駆使した過度の監視を警告している。

新たなビデオ監視体制は、2024年大会のために今年初めに可決された『Loi JO 2024』という法律の下で認可されたものだ。この法律は、公共の安全を脅かす行動をリアルタイムで検出するためのカメラの映像解析を許可する。このシステムはオリンピック終了後も2025年3月まで稼働する予定だ。

政府と契約した民間企業がこのスマートカメラのソフトウェアを開発している。これらの企業は、オリンピックのようなイベントに似た状況を識別するための学習を、既存の映像を使って進めている。

8月末に公開された実施令によると、AIが警告を出すトリガーとなる出来事には、放置された物や武器、制限されたエリアへの不正なアクセス、大きな混乱を示唆するような群衆の動きなどが含まれる。

顔認識や個人を識別する技術は明確に禁止されており、スマートカメラは状況のみを検出し、複数のカメラを横断して人物を追跡することはできない。警察官はすべての警告を確認してから行動を取る。

それにもかかわらず、デジタル権利擁護団体は、新システムによって可能になる監視権限の拡大に警戒を続けている。彼らは、オリンピックが終わった後のこのシステムの運用方法に懸念を抱いており、特定の活動家や抗議者がターゲットにされるのではないかと警告している。

そのようなグループの1つであるLa Quadrature du Netは「自動ビデオ監視の初の合法化は、フランスのセキュリティ業界にとって勝利への一歩だ。長年にわたって、自分たちのアルゴリズムを人々にテストし、改良し、その技術を世界中に販売することを求めてきた人々は、今、満足している」と述べている。

フランス政府は、2024年にパリを訪れる数百万人を潜在的な攻撃から守るためには、AIによるビデオ分析が不可欠だと主張している。当局は、このテクノロジーがあれば、2016年にニースで発生したトラックテロで使用されたトラックを発見することができた筈だという。

しかし、もし正当なセキュリティ上の脅威だけに厳密に限定されないと、人工知能はすでに過剰に取り締まられているコミュニティに対する差別を自動化する危険性があると批評家はいう。

フランスは公共の安全の名の下に国家監視の権限を拡大する一方で、適切なデータ保護をめぐって欧州の裁判所や規制当局と衝突を続けている。2024年のオリンピックでは、フランスの技術セキュリティ・モデルが世界的な大舞台で試されることになる。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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