不安障害やうつ病のチェックシートも追加
ヘルスケアアプリには「質問票」もある。この質問票は全般性不安障害を評価するためのGAD-7と、うつ病の有訴率を測るためのPHQ-9を元に作られた、不安やうつ病などのさまざまな精神的健康状態に関連する現在のリスクを把握するためのものだ。質問票の結果は、医師やカウンセラーなど専門家との相談に使うために都度PDFファイルに変換保存もできる。だが回答の内容がクラウドやアプリに残ることはなく、ユーザーのプライバシーを配慮した仕組みになっている。自身の心の健康に少しでも不安を感じることがあれば気軽に試せる。
心の状態記録に追加された「質問票」日常から不安を感じた際に気軽に使うこともできそうだ
心の状態に関わる機能は、前提としてユーザーを治療することを目的としていない。アップルは「レジリエンス(快復力)」と「感情制御」は、毎日の振り返りによる記録の積み重ねから得られる個人の「スキル」であると位置付け、これを身に着けるためにデジタルデバイスの活用を促している。
筆者も仕事が詰まっている時に、いったん手元を休めて深呼吸をする感覚で、iPhoneやApple Watchから「心の状態」を記録するとスイッチの切り替えにもなった。Apple Watchのユーザーならば、マインドフルネスアプリの「深呼吸」「リフレクト」といっしょに集中力を回復させるためのツールとしてポジティブに使えると思う。
目の健康を保つための2つの新機能
iOS 17の正式リリース以降には「ジャーナル」というアプリが追加を予定している。心の健康バランスを整えるためにも役立つと言われている「日記をつける」ためのアプリだ。こちらはまだベータ版に追加されていない。心の状態記録と併用しながら、iPhoneがメンタルヘルスの良きカウンセラーに成り得るのか、リリース後にまた試して報告したい。iOS 17にはユーザーの「目の健康」に関わる2つの新機能も加わる。1つは現行モデルのApple Watchがすべて搭載する環境光センサーにより、ユーザーが身に着けて過ごした日光下の時間を測定、ヘルスケアアプリに記録を残すという機能だ。「心の状態」のグラフによるセルフチェックにも、生活要因として「日光下の時間」を関連付ける項目があり、これを活用できる。または親が子どもにApple Watchを持たせて、子どもが屋外で過ごした時間を測定、ヘルスケア共有で把握することにも使える機能としてアップルはこれをアピールしている。
Face IDに対応するiPhone/iPadで使える「画面との距離」を測る機能。一定時間、ディスプレイに顔を近づけすぎるとアラートが表示され、デバイスを顔から離さない限り消えない
もう1つ、目の健康に関わる機能としてユーザーの顔(目)とデバイスの「画面との距離」測定がある。深度情報を扱う機能であることから、Face IDに対応するiPhoneとiPadがこれに対応する。大人の眼精疲労の軽減にも役立つ機能だが、筆者のように細かな文字を読むためiPhoneの画面に顔を近づけることが増えてしまったユーザーには、割と短い周期で画面にアラートが表示されてしまうので痛し痒しだ。設定の「スクリーンタイム」からオン・オフを切り換えながら使える。