この200年間の科学の進展により、鉱物はランダムに分布しているわけではないことが判明している。地球上に存在する5000種類を超える鉱物は、多くがいわゆる共生関係にある。共生とは、母岩の一定の化学組成や、温度・圧力といった適切な条件が満たされた場合など、特定の物理化学的法則の下で形成される鉱物の集合体のことだ。
こうした鉱物集合体を形成する法則を人工知能(AI)によって「発見」することで、鉱床の位置予測を試みた研究結果が、このたび発表された。
研究チームは、5478種類の鉱物の産地29万5583カ所が登録された『Mineral Evolution Database(鉱物の進化データベース)』のデータをAIに学習させ、鉱物アソシエーション分析(MAA)を行った。アソシエーション分析とは、データポイント間の関連性を見つけ出し、それを統括する法則を定式化する機械学習手法だ。導き出された法則を用いて、提供データに基づいた予測モデルの作成が可能になる。
研究では、作成したモデルを使って、米カリフォルニア州モハベ砂漠にあるテコパの地層を探査した。同地では約500万~2000万年前に構造盆地に堆積した湖や川の堆積物と、地下から上がってきた熱水やマグマが複雑に結合して、希少鉱物が形成されている。
テコパの地層で見られる基本的な鉱物組成に基づき、AIはラザフォーディーン、アンダーソン石、シュレキンゲル石、ベイレイ石、チッペ石など、希少なウラン鉱物の位置を予測できた。さらに、モナズ石、褐簾石、リシア輝石などの重要な希土類元素(レアアース)とリチウム鉱物が埋蔵されている可能性の非常に高い場所も特定できた。
研究チームは、どんな場所でも適切なデータがあれば、鉱物アソシエーション分析によって未発見の鉱床を特定し、鉱物目録を予測できると考えている。このモデルは地球に限らず、あらゆる岩石惑星に適用できる。
米航空宇宙局(NASA)のマーズ・リコネッサンス・オービターは16年間にわたり、火星の鉱物地図を作成してきた。カバー面積は火星の地表の86%に及ぶが、輝石や炭酸塩といったごく一般的な造岩鉱物の位置しか示せていない。鉱物アソシエーション分析を活用すれば、これまで科学者たちが見つけられなかった、より希少な鉱物が見つかるかもしれない。
研究結果をまとめた論文は、米科学アカデミー紀要(PNAS)の姉妹誌であるオープンアクセスジャーナル『PNAS Nexus』2023年5月号に掲載された。
(forbes.com 原文)