また、製造業や農業などの各産業において作業プロセスをオートメーション化したり効率性を飛躍的に向上したりする上でデジタルテクノロジーがどのように貢献するかも解説されています。さらに、AIシステムには、2030年までに世界全体の二酸化炭素排出量を4%削減することに貢献する可能性があることも示されています。
テクノロジーの進歩は、地球温暖化に対する解決策の実現に深く関わってきますが、その一方でデジタルの進展に伴い、廃棄物の増加や資源の浪費、二酸化炭素排出といったテクノロジーの普及の弊害も顕著になってきます。
倫理的な課題
新興テクノロジーが普及すると、個人情報やプライバシー、セキュリティに関する課題も浮上してきます。人道的な目的でのデータ活用と個人の権利の保護を両立させることが重要です。新興テクノロジーは人類が直面する危機を緩和する可能性を秘めていますが、その恩恵は社会経済的地位やジェンダーや地理的位置にかかわらず誰もが公平に享受できるようでなければなりません。デジタル・デバイドを是正して包括的なアクセスが実現できるような取り組みを進めていくことが必要です。
また、適切な倫理的枠組みがない状態で新興テクノロジーを導入した場合には、想定外の事態が発生することを念頭に置いておく必要があるとともに、予防策が想定外の事態を招くおそれがあることも理解することが求められます。
既存の危機を深刻化させたり、新たな危機を生み出したりすることがないように、潜在的なリスクを特定し、慎重な管理のもとで新興テクノロジーを展開していかなければなりません。
新興テクノロジーと人類が直面する危機の関係性に対応していくには、分野横断的なアプローチを実施していく必要があります。加えて、各国政府、国際組織、企業、公共部門、市民社会など、さまざまなステークホルダーが連携していくことも欠かせません。これらのステークホルダーが協力し合いながら、新興テクノロジーの可能性を活用して人類が直面する危機に効果的に対処していくのです。
さらに、倫理に関する明確なガイドラインと規制を策定し、危機シナリオの中で新興テクノロジーをどのように開発・展開していくかを制御していくことも不可欠です。
新興テクノロジーと人類が直面する危機の関係性からは、機会と課題の両方が生まれてきます。包摂的で責任あるアプローチをとることで、新興テクノロジーの力を危機への対処や危機の軽減に活かし、より強靭で公平な社会に向けたパラダイムシフトを実現できるのです。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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