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宇宙

2023.06.11 16:00

長期宇宙滞在で脳に変化、回復には3年必要に 論文

宇宙飛行士の脳室が正常な大きさに回復するためには、次のミッションまで3年間の間隔が必要であることを示した論文が発表された(Getty Images)

有人月探査や、さらに時間のかかる火星の有人探査ミッションが話題を集める中、まだ議論が十分にされていないものが一つある。それは、重力だ。具体的には、人間にとっての重力の重要性、そして人工重力を備えた宇宙船を開発する必要性だ。

この点について光を当てた論文が8日、学術誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。宇宙飛行士30人を対象に調査を行ったところ、長期の宇宙飛行によって人間の脳に生理学的変化が起きることが判明した。

脳の変化は長期間宇宙に滞在した人では特に顕著だったが、滞在6カ月を経過すると変化が止まる可能性があるという。研究チームは、ミッション間に3年以上の間隔を空けることを検討するよう、各宇宙機関に提案している。

宇宙飛行は人間の脳をどう変化させるのか?

重力がなくなると、脳に保護、栄養を与え廃棄物を除去する役割を持つ「脳室」が拡大する。宇宙に長く滞在するほど拡大は大きくなる。論文によると、6カ月以上宇宙に滞在した宇宙飛行士は、脳室が通常サイズに戻るまでに3年かかることもあった。

論文の著者の一人である米フロリダ大学のレイチェル・サイドラー教授(生理学・運動学)は「宇宙で長い時間を過ごすほど、脳室は大きくなります」と説明している。「多くの宇宙飛行士が2回以上宇宙を旅しています。私たちの研究は、脳室が完全に回復するまでに約3年かかることを示しています」

脳室拡大は、宇宙飛行が脳に与える影響の中でも、最も長期的なものだ。その原因は無重力状態にあり、体液が上方へ移動して頭蓋骨の中で脳を押し上げることで起きる。

宇宙観光旅行は安全

ただし、観光目的の宇宙旅行ではこの心配は無用だ。短期旅行は、脳に生理学的変化をほとんど与えない。「宇宙滞在期間が2週間から6カ月間に増えると、大きな違いがでます」とサイドラーは言う。「2週間だけであれば、脳室に測定可能な変化は見られません」

また、滞在6カ月以降は、脳室にそれ以上の変化がほとんど生じない。「将来もっと長い期間、人々を宇宙に送り出すことを考えると、この変化が時間と比例して増え続けないことに安心しています」とサイドラーは述べた。

火星への飛行は通常800~1000日間かかるが、理論上では、脳への影響は6カ月間宇宙で過ごす場合と変わらないことになる。

しかし、一つ問題がある。
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翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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