映画

2023.04.18 17:00

黒澤明も期待した北野武監督の最新作『首』。「本能寺の変」を題材に

松崎 美和子
その明智光秀役を務めた西島は、2002年公開の『Dolls』以来となる北野作品への出演。「20年ほど前になりますかね。自分が成長した姿を見せようとは絶対に考えないように、無欲に監督の頭の中にある作品をなんとか現実の世界に出すために、自分も力を出し尽くそうと毎日現場に臨んでいました。とても幸せな毎日でした」と語った。

西島は、出演オファーを受けた際のエピソードも披露。「ちょうどマネージャーから話が来ていると聞いた数日後、バラエティーの現場で監督とご一緒して、『話聞いてる?』『ハイッ!』『頼むね』『わかりましたッ!』と。あれがオファーだったのと思いますが、決まって非常に嬉しかったです」と明かした。
西島 秀俊

西島秀俊


西島はさらに、北野の撮影手法にも言及。「(劇中では)常に死がそばにある状況の中で生きているので、滑稽なことと悲惨なことが本当に隣り合わせ。すごく笑っているのに、その後に突然信じられないくらい悲惨なことが起きたり。悲惨なんだけど、思わずちょっと笑ってしまったりするのは、きっと監督にしか描けない世界観や面白さだなと、現場で感じていました」と話す。
加瀬 亮

加瀬亮


その独特さには、狂乱の天下人・信長を怪演した加瀬亮も、「自分に信長役をくれるのは監督くらいしかいないと思いました」と同調。「残酷なシーンも数々出てきますが、監督が描くと、不思議と、最終的にはすごく品のいい映像に収まっているところは、他の監督と明らかに違う」と驚きを語った。

北野は加瀬の発言を受け、「私と三池(崇史)監督の違いです。私の方が教養があって、家柄がいいので」とジョークを飛ばして、会場を沸かせた。

また、撮影後半には北野の希望による追加のワンシーンを撮影する際、大がかりのセットを組みながらも、1カットだけで終了したこともあったという。そのエピソードを西島が、「このセットを使って、引きのワンカットで終わるんだと。スタッフも茫然としながら、僕も寄りとかあるのかなと気持ちを込めて演技をしていたら、一瞬で終わったという」と、当時の驚きとともに披露すると、北野も自身の撮影手法について明かした。

「大島渚さんの映画のとき、『アップを撮る人は相当下手な監督だ』ってよく言われましたね。黒澤さんや大島さんと話したときに、ちょこっと言われたことが印象に残っていて、大事なシーンは引くべきだとよく言われた。『これだ』って、寄って印象づけるのは下品だとよく言われたから、それをしたらダメだと、クセになったなと」

会見に登壇した、制作のKADOKAWAの代表取締役社長・夏野剛氏が、「15億円。全部うちが出しています」と製作費についても言及した、大スケールの作品。今秋に全国公開される予定となっている。

北野は2月25日に発売された『Forbes JAPAN(フォーブスジャパン)2023年4月号』の表紙にも登場。『「世界のキタノ」からすべての経営者に贈るアフリカ、足立区、そして「人づくり」秘話』として、ロングインタビューにも答えている。

文=小谷紘友

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