しかし、ニューヨーカーの大多数はクレープがすぐ提供されることを期待するのではないだろうか。日本風クレープの調理には時間がかかるのでは? この疑問に対し、リンは店のコンセプトについて「ファストフードとは考えていないが、注文を受けてからすばやく作って提供している」と説明した。各店舗にはオープンキッチンがあり、クレープ作りの様子を見ることができる。
店内での食事に対し、店外販売の売上額は店舗の立地によって異なる。たとえばニューヨーク市内では、テイクアウトと配達が売上の30~40%を占めるという。こうした店舗の中にはかなり面積が限られたものもあり、チャイナタウンの店の広さは約26平方メートルで5席しかない。一方、イーストビレッジの店は約65平方メートルあって10人が座れる。ニューヨーク市外だと約111~177平方メートルの店が多いようだ。
配達では鮮度維持が欠かせない。「クレープはすべて新鮮な材料で作られ、まず紙のスリーブに包んでから器に個別に梱包される。こうすることで、食べる時まで新鮮さを保つことができる」
当初は主にアジア系の顧客を狙っていたかもしれないが、現在では客層は広がった。「もう特定の客層をターゲットにしてはおらず、すべての人が対象だ」とリンは話した。
口コミサイトYelp(イェルプ)に投稿されたレビューはおおむね好意的だ。抹茶チョコトリュフクレープと照り焼きチキンクレープを注文したニューヨーク在住の女性と母親は「軽くてサクサクでとても新鮮」「米粉が独特の風味を醸し出している」と評価していた。
米国のファストカジュアルレストランの多くは、ハンバーガーやピザ、タコスを中心に展開しているが、リンはTスワール・クレープについて「そのどれにも当てはまらない。うちの店そのものが1つのカテゴリーだ」と自負する。人々がクレープを食べるのはどんなときかと問えば「ほぼ1日中、いつでも」との答えが返ってきた。午前11時の開店と同時に客はやってくる。朝食にも昼食にも夕食にもデザートにもなる。
リンはさらなる店舗拡大に張り切っている。今年は直営店5店舗とフランチャイズ5店舗を新規開店し、年内に店舗数を43店舗まで増やす計画だ。日本風クレープは明らかに上昇気流に乗っている。
(forbes.com 原文)