経営・戦略

2023.03.28 09:00

「誰も信用しちゃいかん」ソニー盛田はマイナス思考で成功した

Getty Images

盛田さんは「ビジネスでは誰も信用しちゃいかん」が口癖のひとつだった。約束したつもりでも、相手は気が変わるものだし、自己の利益を優先する。「相手を責めるのは間違いだ。信用してだまされるほうが悪い」と盛田さんは私たち部下を教育した。「ビジネスでは誰も信用するな」は、おそらく盛田さん自身がさんざんだまされた結果、辿り着いた教訓なのだろう。「わしが最もひどくだまされた相手は(松下)幸之助さんだ」
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盛田さんは笑いながら話していた。「井深イズム」がビデオ戦争においてソニー敗北の一因となったことも然りである。

日本ビクターでVHS方式が完成する前、盛田さんは松下電器もベータ方式を採用するように幸之助さんを口説いていた。しかし幸之助さんは完成したVHSを見て、「ベータ マックスは一〇〇点の方式だが、VHSは一五〇点だ」と言って後者を採用した。松下電器とソニーはクロスライセンス契約を結んでいたから、その後にソニーがベータマックスで二倍以上の時間を録画できる技術を開発すると、松下電器はVHSにその技術を応用して発表した。そうなっては、ソニーに勝ち目はない。

だからといって、盛田さんは幸之助さんのことを恨んではいなかった。約束したつもりでも、相手はすぐ翻意するし、どう立ち回れば自分の利益を最大化できるか、目ざとく計算するもの。「信用してだまされるほうが悪い」のだ。盛田さんに言わせれば、「このわしをあそこまでだましたのだから、幸之助さんはすごいビジネスマンだ!」ということなのだろう。
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世界はアンフェアであり、誰も信用できない、というマイナス思考が、実は盛田さんの強みだったと私は分析している。ビジネスを甘く見ないから、常に最善を尽くして、高い成果が出せたのだ。


『ソニー創業者の側近が今こそ伝えたい 井深大と盛田昭夫 仕事と人生を切り拓く力』(郡山史郎著、青春新書インテリジェンス)

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