暮らし

2023.01.25 12:00

最期まで⾃分らしく⽣きてほしい。42歳医師が「死に際」に向き合う理由

安井佑医師

こうしたコミュニケーションのために、病棟では、明るい壁と暗い壁をつくるなどして空間デザインの面でも“揺らぎ”を表現しました。沈みたい人がちゃんと静かにいられる空間があり、みんなと話せる明るい場所もある。
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一般的に病院は、白い壁と白い天井に囲まれていることが多いですが、そんな空間で人間ってちゃんと悩めるだろうか、って思うんです。患者さんの心の変化に寄り添うことも、病院の役割だと考えています。



そして、もうひとつの役割は、地域で生活している患者さんが一時避難できる場所としての機能です。自宅の介護者が倒れてしまったり、リフレッシュが必要になったりすることはあります。
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例えばおばあちゃんを介護しているご家族が、「おばあちゃんが大好きだし家でずっと見ていきたいけれど、1〜2週間の休みが欲しい」といったときに入れる場所。あとは少しの容態変化があったときに頼れる場所、というイメージです。

地域に暮らす人たちを最期まで支え続ける病院になりたいですね。

──患者の受け入れはどのように行っていますか。

現在、外来はしていないので急性期病院からの紹介がメインです。あとは在宅医療を受けている(か、利用している)患者さんで、入院が必要な方がいらっしゃることもあります。

この建物は3病棟で120床つくれる設計ですが、現在はまだ1病棟が稼働していないので、受入れ可能なのは最大80床で、常に60人ほどが入院しています。「おうちにかえろう。病院」のような地域包括ケア病棟に入院できる日数は、規定により最大60日となっていますが、当院の患者さんの平均滞在日数は約30日。入れ替わりは比較的早いです。

原点にミャンマーでの医療経験

──「おうちにかえろう。」というコンセプトはどこから生まれたのでしょうか。

原点には、ジャパンハートでミャンマーにいたときに学んだ「死生観」があります。多くのミャンマー人にとって、人生が終わることは「絶望」ではありませんでした。もちろん死への恐れはあるでしょうが、「生まれた者は必ず死ぬ」ということを身に染みて分かっているからだと思います。

僕が医療支援をしていた2007年ごろのミャンマーは、平均寿命が50代と低く、若くして亡くなるケースも多々ありました。そんな中で印象に残っているのが、20歳の女の子の言葉でした。
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文=田中友梨 写真=山田大輔

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