【ダボス2023リポート】リスキリング革命で目指す、人的資本の向上と働き方の未来

Photo by Dursun Aydemir/Anadolu Agency via Getty Images

──OECDは、今後10年間で11億の仕事がテクノロジーによって激変する可能性があると見積もっています。こうした状況下で、どのようなリスキリングが必要でしょうか。

このOECDの見解は、2020年1月に世界経済フォーラムが創設した「リスキリング革命」(Reskilling Revolution)というイニシアチブの土台になっています。このイニシアチブは、2030年までの10年間に10億人がより良い教育やスキルを習得する機会を得ることで、自身の仕事の転換に活用することを目指すものです。

リスキリングの内容は、その人の状況に応じてカスタマイズする必要があります。しかし、3つのコア領域を挙げるとすれば、1つは「3Dデジタル」です。ヘルスケアにおけるデジタル技術の活用なのか、IT分野におけるデジタル技術の活用なのかなどによっても意味合いは大きく異なりますが、一般的にデジタル技術のリスキリングとスキルアップは重要です。

2つめの要素は「ソーシャル・スキル」です。ソーシャル・スキルには、人々がお互いにどのように交流し、どのように協力し合うかなどが含まれます。これもデジタルとともに、非常に重要なスキルです。

そして3つめの要素は「個人の能力開発」です。クリティカル・シンキング(批判的思考)、アクティブ・リスニング、リーダーシップに関するスキルなど、自己啓発に欠かせない要素がすべて含まれます。このようなソフトな要素に加えて、職業ごとに特有のスキルも身につける必要があります。

私たちは、これらの点を踏まえて「リスキリング革命」を主導してきました。

──「リスキリング革命」による直近のインパクトを教えてください。

現時点で110の企業や組織が、自社の従業員の枠を超えてリスキリング・プログラムを拡大することに成功しました。さらに、そのプログラムをバリューチェーンやより広範なコミュニティに開放しています。その結果、2030年の目標の約30%に相当する3億人の人々がこのプログラムを利用できるようになりました。

さらに、各国の官民連携プラットホームである「クロージング・ザ・スキルズ・ギャップ・アクセラレーターズ」を立ち上げ、この1年間で17カ国にいる5000万人以上のリスキリングをサポートしました。

現時点では、官民連携によるリスキリングのサポート数は、世界的な企業によるコミットメントに比べて少ないです。しかし、これこそがシステムの変革を起こす場だと私は考えています。継続的な再教育とスキル向上のシステムを構築することで永続的なレガシーを得ることができるからです。官民連携の取り組みこそ、より再現性が高く、将来にわたって継続されるものなのです。

Saadia Zahidi(サーディア・ザヒディ)◎スミスカレッジ経済学士、ジュネーブ大学院国際経済学修士、ハーバード大学MPA。ジェンダー・パリティ・プログラム責任者、市民社会責任者、雇用・ジェンダー・イニシアティブ責任者、教育・ジェンダー・仕事責任者などを経て現職。人的資本、ジェンダー・ギャップ、仕事の未来に関するフォーラム報告書の共著者であり、「BBC 100 Women」(2013年、2014年)をはじめ数多くの賞を受賞した実績を持つ。著者に『Fifty Million Rising』(2018年)。

文=瀬戸久美子

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