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2023.01.14

「非財務の情報開示」国際基準は大きなチャンスに

ESG関連の非財務情報開示について、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による国際基準づくりが進んでいる。基準策定の進捗状況と、今後の展開は。2022年9月にボードメンバーに就任した小森博司に話を聞いた。

小森博司

小森博司




ESG投資の流れが加速する一方、非財務の情報開示についてはいまだ国際的な統一ルールがない。そこで、2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、国際財務報告基準(IFRS)財団傘下に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を創設することが発表された。22年8月にはボードメンバー14人の任命が完了。日本からは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)でスチュワードシップとESGを統括した小森博司が選出された。初会合を終えたばかりの小森に基準策定の現状と今後の展開を聞いた。

──ISSB創設の背景は。

小森博司(以下、小森):これまで複数のESG格付け機関やNPO、NGOなどが独自の非財務情報開示フレームワークを策定してきた。結果、開示基準や指標が乱立し、情報の比較可能性が損なわれる状況も出てきた。そんななか、投資家たちがIFRS財団にサステナビリティ情報開示の世界基準の構築を求めたことが創設のきっかけとなった。

非財務情報開示のルールづくりは急務だ。そこで、まずはISSBがふたつの公開草案をつくり、22年3月末に示した。ひとつはサステナビリティ基準全般に関するもの(S1)、もうひとつは気候変動関連に特化した開示要求事項だ(S2)。

──公開草案の特徴は。

小森:サステナビリティ会計基準審議会(SASB)や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)など、投資家や企業が慣れ親しんでいる開示基準のフレームワークをベースにしている。ISSBがゼロから新しい基準をつくるわけではない。また、ISSBが示す基準はグローバル・ベースラインだ。使うかどうかは任意だが、この基準を最低ラインとし、各国の政府当局が独自ルールを上乗せすることで、各国の状況に即したものになると期待している。
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text by Kumiko Seto 瀬戸久美子=文

この記事は 「Forbes JAPAN No.100 2022年12月号(2022/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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