地中海でマイクロファイバーが細菌の温床に 食中毒もたらす菌も

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プラスチック汚染や漁業、繊維産業により大量のマイクロファイバーが地中海に放出されていることで、200種近くの細菌がこうした微細な汚染物質を宿としている。

研究者らは、オープンアクセスの科学誌「プロスワン(PLOS One)」に発表された新たな調査で、こうした細菌には食中毒を引き起こすことで知られる細菌も含まれることを突き止めた。

マイクロファイバー汚染は沿岸地域に多く見られ、50%は合成繊維によるものだ。残り半分は羊毛や綿などの天然繊維で構成されていることが多い。マイクロファイバーがいつどのように分離するかについてはほぼ理解されていないものの、マイクロファイバーは海洋生物や海洋生態系全体に深刻な影響を及ぼし、人間の健康に対しても大きな脅威となる。

プラスチックのマイクロファイバーは海で最も一般的な人工粒子でもあり、環境に排出されるマイクロプラスチックの80~90%を占めている。細菌が定着したマイクロファイバーを海洋生物が食べ物と間違って摂取し、その過程で食物連鎖全体が汚染される可能性がある。

地中海には、世界中の海のマイクロプラスチックの約7%が漂っている。研究チームは高度な顕微鏡検査技術とDNA配列を用いて、地中海に浮かぶマイクロファイバー内の細菌の種類を調べた。

その結果。研究者らは海に浮かぶ全てのマイクロファイバー上に生息する、195種からなる2600ほどの細菌体を発見した。これには、海産物に含まれ食中毒を引き起こす腸炎ビブリオが含まれている。

研究者らは論文で「この調査は、環境内に存在を続けるプラスチックごみの量が増加していることで、移動の機会を増やすさまざまな『ヒッチハイカー』の動きが影響を受け、木や堆積物など存続期間が短い他の天然粒子と比べて汚染のリスクが高まるかどうかについて問いを提起するものだ」と述べている。

研究者らは「合成繊維はその耐久性から、海中の病原微生物やその他の汚染物質の媒介手段となること。それを踏まえると、このタイプの汚染は生態学的・経済学的影響をもたらす可能性がある」と補足し、「人間による大陸や海への化学物質やプラスチックの放出は臨界点に達し、プラスチック汚染はプラネタリーバウンダリー(人が生存できる安全な限界領域)への脅威としての基準を満たしている」と述べた。

forbes.com 原文

翻訳・編集=出田静

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