迫る冬の旅行シーズン、高齢者のコロナ感染に懸念 入院で深刻な認知障害発症も

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年末年始の旅行シーズンを控え、医療関係者たちは、大勢の人の移動にともなって新型コロナウイルスなどの感染状況が悪化するのではないかと懸念を募らせている。

感染病の専門家であるウィリアム・シャフナーは米公共ラジオNPRの番組で、新型を含むコロナウイルス感染症、RSウイルス感染症、インフルエンザという3つの感染症が同時に流行する「トリプルデミック」に直面していると語っている。

こうしたなか、人々も新型コロナにあらためて注意を向けるようになっている。とくに懸念されることのひとつが、新型コロナウイルスが引き起こす脳への長期的なダメージだ。

2年たっても消えない「ブレインフォグ」


中学校の教員であるサンドラ・Gは2021年に家族と車で旅行したあと、新型コロナに感染していることがわかった。感染から1年たついまも、錯乱や注意散漫、倦怠感といった症状に悩まされているという。「体より先に脳が老化しているような感じなんです。体は熱や咳から回復したのに、脳はまだコロナからの回復途上にあるというか」

コロナに感染後、頭の中に霧がかかったようになり、記憶や集中力に支障をきたす症状は「ブレインフォグ」と呼ばれる。オックスフォード大学の研究チームによると、こうした症状は感染から2年たっても続く可能性があるという。

また、ワシントン大学(セントルイス)医科大学院のチームが新型コロナの既往歴がある退役軍人15万4000人の健康記録を調査したところ、新型コロナにかかったことのある人はそうでない人に比べ、神経障害を発症するリスクが7%高かった。

新型コロナに関連した神経症状としては、記憶障害のほか、けいれん、脳卒中などがよく知られる。ワシントン大学の研究によると、新型コロナの既往歴がある人の場合、ブレインフォグのような記憶障害を発症する率は77%高かったという。

旅行者は高齢者を感染から守る配慮を


この冬には、米国人の半数近くが旅行を計画している。とくにミレニアル世代の旅行意欲が高く、しかも83%は親や祖父母と旅行したり、高齢の身内のもとを訪れたりしたいと答えている。

医療関係者らがこうした調査結果に気をもんでいるのは、こうした旅行者たちは高齢の家族や親族を感染症にさらしかねないからだ。

高齢者は、新型コロナウイルスに感染した場合の入院率が若い人よりも高い。さらに、入院がきっかけとなって認知面の深刻な合併症を発症するおそれもある。また、高齢の入院患者の3分の1はせん妄を経験するという研究結果もある。

病院でのせん妄は、患者が慣れ親しんだ環境に戻ると消えることが多い。だが、トリプルデミックのなかで新型コロナにかかった人が肺炎や臓器損傷、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などを発症すると、おそらく数週間から数カ月の入院を余儀なくされることになる。

新型コロナは、ブレインフォグや入院中のせん妄などによって、高齢者の健康に永続的なリスクをもたらすおそれがあるということだ。

この冬に旅行を計画している人でも、自分自身や周りの人を新型コロナへの感染や認知障害の発症リスクから守るすべはあるだろう。医師の助言も参考にして、可能ならワクチンの接種やマスクの着用、対人距離の確保といった対策をとることを検討してみてもよいのではないか。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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