カリフォルニア大学バークレー校スタージャ・センター(SCET)が発表したホワイトペーパーでは「ブロックチェーンは基本的に、参加者間で実行・共有されたすべての取引またはデジタルイベントの記録または公開台帳の分散データベースである。公開台帳の各取引は、システム参加者の過半数の合意によって検証される。また、一度入力された情報は決して消すことができない」これまでのところ、ブロックチェーンの最も一般的な活用は、デジタル通貨の分散型バージョンである有名な暗号資産ビットコインだ。
この技術の提案者は、ブロックチェーンが、データと情報の交換をより簡単に、より信頼性の高い、安全なものにし、あらゆる産業の世界に革命を起こすと仮定している。この技術をいち早く採用しようとしている業界もあるが、具体的にどのように活用できるのか、慎重に行動している業界もある。
2021年末のプレゼンテーションで、米国保健福祉省(HHS)は、ヘルスケアにおけるブロックチェーンの可能性について議論した。このプレゼンテーションは、サプライチェーンの透明性や医療記録へのアクセスの確保から、保険会社とのコミュニケーションの効率化、さらには患者の遠隔モニタリング機能の実現など、その活用の可能性を示す複数の事例を紹介した。
特に医療データに関しては、既存のソリューションと比較して、ブロックチェーンがより高いセキュリティと忠実性を提供できると、ブロックチェーン愛好家たちは考えている。世界経済フォーラムが発表した記事は、次のように説明している。「医療文書用のブロックチェーンベースのソリューションは、異なる当事者とコミュニケーションする際、個人の情報の整合性を保護する安全な暗号化技術を提供する。トークン化、スマートコントラクト、ブロックチェーンネットワークの取引に関わる暗号化技術を通じて、事前承認のプロセスが大幅に削減され、患者がより効率的に必要な、情報に基づいたケアを受けられるようになる。医療従事者が、これまで患者や、地元の医師、研究所など、さまざまなソースから物理的に郵送または電子メールで送られたファイルに頼っていたのが、関連情報に迅速にアクセスできるようになる結果だ」
しかし、警戒している人もいる。1つは、ブロックチェーンが人々によく理解されていないため、医療インフラのような重要なものにこの技術を適用することに懐疑的で消極的な人が多いということだ。さらに、ブロックチェーンの使用例は増えているとはいえ、まだ限定的だ。しかし、この技術の基礎自体は新しいものではない。実際、米国保健福祉省の発表でも説明されているように、ブロックチェーン理論の最も初期の形態は1980年代に発表され、この20年間でより明確なかたちになった。
いうまでもなく、ヘルスケア情報とデータは、特にサイバーセキュリティの脅威とデータの忠実性が常に問題になっている世界で、長い間、革新のときを待っていた。そして、ブロックチェーン技術は今後利用される可能性がある。しかし、イノベーター、政策立案者、技術愛好家は、この技術を安全かつ責任ある患者中心の方法で医療に適用する方法を考案しなければならない。
(forbes.com 原文)