金星はそのサイズ、質量、化学組成そして雲のある大気の存在というポイントでみれば、地球と非常によく似ている。
さらに、大気中で見つかった水素の痕跡は、この惑星がかつて海で覆われていたことを示唆しており、かつてこの「双子惑星」で生命が誕生したことがあると推測する科学者もいる。それでも、地球とは異なり、金星の大気は95%が二酸化炭素で構成され、少量の窒素と有毒ガスのために酸性雨が降り、地表の圧力は90気圧に達し、暴走する温室効果によって下層大気の平均温度は鉛と亜鉛の融点を超える。
数百~数千世紀続いた火山活動と膨大な量の噴火物が、金星を温暖多湿の世界から、今日の酸性温室へと変化させるために一役買ったののかもしれないとある最新研究が示唆している。
地球では何万年、何十万年と続いた大規模噴火時代の産物が巨大海台だ。噴火は10万立法マイル(約4x10^14立法メートル)の火山岩を地表に積もらせた可能性があり、それは全大陸部分を埋め尽くすのに十分な量の溶岩だ。金星は似たような噴火を惑星規模で体験している。
本研究は、地球の歴史上、巨大海台が気候変動の原因となり、数百万年前に起きたいくつかの大量絶滅の原因である可能性についても検討している。
「地球と金星の巨大海台の記録を理解することで、これらのイベントが金星の現在の状況を作り出したかどうかを究明できます」と筆頭著者でNASAのゴダード宇宙科学研究所のマイケル・J・ウェイ博士はいう。
現在の金星は表面温度が平均300度前後、大気圧は地球の90倍もある。本研究によると、その膨大な火山流出物が、金星古代史のどこかの時点で現在の状況を作り始めたのかもしれない。具体的には、地質年代的に短い期間(100万年以内)にそのような噴火がいくつか起きたことが温室効果の暴走を呼び、この惑星の多湿・温暖から高温・乾燥への転換を開始させた。
固化した溶岩の巨大な平原は金星表面の80%を覆ったとウェイはいう。「これらの平原を作ったイベントがどの程度の頻度で起きたのかはまだわかりませんが、地球の歴史を研究することで絞り込んでいけるでしょう」
金星の火山であるサパス山が表面を覆っているところのコンピュータ生成画像。溶岩は画面手前のひび割れた平原を数百キロメートルにわたって流れ出た(Stocktrek Images VIA Getty Images)