送電網の逼迫
送電網の逼迫は、自宅で夜間にEVを充電する個人オーナーにとってはさほどの問題ではないが、今後、大規模なフリートを導入する配送業者や交通オペレーターにとっては、対処すべき課題と言える。
スタンフォード大学の最近の研究では、カリフォルニア州のように、EVが走行中の車の約6%を占める州では、オフピーク時の夜間に充電しておくための送電網の容量は十分にあると推定されている。しかし、EVのシェアが30%程度になるであろう10年後には、夜間料金が今ほど安価ではなくなるため、太陽光発電のピークとなる日中の時間など、他の時間帯の充電に移行する必要がある。
「グリッドは常に準備されているが、問題はどの程度の金額を払えるかだ」と、スタンフォード大学の土木環境工学准教授のラム・ラジャゴパルは話す。「2035年にアマゾンが夜間にEVを充電することは可能だが、夜間の電気代は日中よりもずっと高くなるだろう」と彼は指摘した。
EV推進派の人々は、自家用車やトラック、バスなどが電力貯蔵所の役割を果たし、必要なときに電力をグリッドに戻すことができるようになると主張する。しかし、ラジャゴパルによると、それはすぐに意味のあるオプションになるとは思えないという。
「心配なのは、この方法でバッテリーがどれだけ劣化するかということだ。多くの人が、実験室でその答えを出そうとしているが、現実の世界ではバッテリーと車両が様々な方法で使用されるため、シミュレーション通りに行くかどうかは分からない」と彼は述べている。
もうひとつの疑問は、小規模な企業がどれだけ簡単にEVを導入できるかというものだ。アマゾンやフェデックスのような大企業は、EVを管理するためのスタッフや技術に投資を行える。しかし、小さな企業にそのような余裕はない。
「中小企業の多くは、EVの充電器を設置し、それを管理するための人材を雇うための資金を欠いている。これは、彼らが過去に一度もやったことのないチャレンジと言える」
「水素燃料」の優位性
こうした課題に対する答えのひとつが、水素という別の道を歩むことなのかもしれない。この記事の冒頭で紹介したフットヒル・トランジット社の場合、プロテラ(Proterra)から購入したEVバスの信頼性やその性能、充電時間を考慮した結果、バッテリー式のバスは最良のツールではないと判断し、水素を燃料とする燃料電池バスに移行する準備を進めている。
フットヒル社はカナダのNFIから33台のゼロエミッションユニットを購入し、先月はカリフォルニア州ポモナのバスステーションに2万5000ガロンの水素タンクを設置した。水素は、電気や天然ガスに比べ、走行距離あたりのコストが約2倍かかるというが、同社は素早い燃料補給が可能で、取り扱いがシンプルな点を評価している。
「水素であれば、私たちはビジネスのやり方を変える必要はない。10分で満タンにして320マイル(約510キロ)の走行が可能で、どんなルートにも対応できる」と、フットヒル社のコルデロは話した。
(forbes.com 原文)