名古屋の伝統工芸をパリへ 地域の価値の作り方

「Creation as DIALOGUE」勉強会での様子


2. 手元の価値を再認識


プロジェクトの始動に際してまず、プロジェクトの関係者から「名古屋は劣っている地域」というステレオタイプを取り払うことに取り掛かりました。これは、このプロジェクトを進める中で大きな課題の一つだと思っていました。

名古屋はものづくりはできるのですが、端的に言えば、他地域と比較して“名古屋の特徴”が伝わりにくいと感じます。そのせいもあってか名古屋市の職員の方々や職人さんたちと話していても「名古屋だから……」と自分たちを一段低く見ていることがよくありました。

そこで最初のミーティングでは、「ドイツで3番目に大きい街をご存知ですか?」と皆さんに尋ねました。「フランスの3番目……」「イタリアの3番目……」と聞いても答えられる人は一人もいませんでした。「では、その3番目の街の産業は何でしょう?」と聞いてももちろん誰も知りません。

要するに、全くイメージがないのです。それは海外の人が名古屋に持っているイメージにも全く同じことで、国を越えると3番目の規模の都市でさえ、全く想像できない地域なのです。

規模の大小でなく、京都や沖縄など既にブランディングできている地域は、欧州の僕の周りにも訪れたことがある人がいますが、行ったことのない名古屋はイメージできませんし、実際に「Nagoya」と伝えてもピンとくる人はほとんどいません。それはある意味これからどうにでも変化をさせられる、ブランディングできる価値を秘めていると思います。



前例がなく、白紙から始まったこのプロジェクトではまず、「自分たちが世界に誇れるものを持っている」という認識を参加者・関係者が持つことの大切さを伝えました。

3. チームの作り方


次に取り掛かったのがチーム編成です。本プロジェクトは、伝統工芸の職人とセンスや経験のあるデザイナーの共創で海外販路を切り開くというものです。

過去にも行政や地域の支援を受けて海外出展をしてきた例を見てきましたが、そこには共通の課題として、「日本の人たちが日本で考え日本でものづくりをして、最後に出来上がったものを海外に持っていく」という図式がありました。

確かに日本には高い技術力がありますが、それが販路先の生活習慣に即しているとは限りません。すると、その出展は技術のお披露目会になってしまいます。
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文=村瀬弘行

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