ハーバード大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学とリンクトインの研究者は、リンクトインの「もしかして知り合い?(People You May Know)」アルゴリズムを使って、あるユーザーにはより弱いつながりを、他のユーザーにはより強いつながりをランダムに提案した。関係の近さを測定する上で、インタラクションの回数や共通の知り合いの数を用いた。
その結果、弱いつながりを多く提案された人は、強いつながりを多く提案された人に比べて、転職するケースが多いことがわかった。
論文の共著者で、ハーバード・ビジネス・スクール教授のIavor Bojinovによると、職探しにおいて最も役立つのは、“非常に弱い関係”と“平均的な関係”の中間である、“ほどほどに弱い関係”であることがわかったという。共通の友人がいる程度の弱いつながりを通じての方が、新しい情報に触れる可能性があるのだという。機械学習やAIなどのハイテク産業に従事する人や、リモートワークに携わる人において、この傾向は特に顕著だったという。
親しい友人よりも、つながりの弱い人を頻繁にユーザーに勧めたところ、ユーザーはより多くの求職申込書を記入し、その結果としてより良い職を得る結果につながった可能性があると研究者らは指摘している。
9月15日のサイエンス誌に掲載されたこの研究は、「The Strength of Weak Ties(弱い紐帯の強み)」という社会理論と、就職との関係を検証する、初めての大規模実験だ。この理論は、ソーシャルネットワークを通じた情報の広がりに着目したもので、ジョンズ・ホプキンス大学の社会学者、Mark Granovetterによって1973年に提唱された。
それによると、人は親しい友人よりも、知人や弱いつながりを通じての方が新しいアイデアを得る可能性が高いという。この理論は社会学の分野で強い影響力を持っており、弱いつながりと親しい友人がソーシャルネットワークや社会運動、人々の協力において果たす役割について、これまでに数多くの研究がなされている。職探しにおいては、つながりの強い人脈よりも、ほどほどに距離のある関係を通じての方が、より新しく、多様な情報にアクセスしやすいため、職探しや昇進・昇給に有利に働くのだという。
Granovetterは、弱いつながりの方が、より高い報酬と満足度を伴う仕事を見つけるのに役立つ可能性が高いことも後に発見している。