貨物トラック乗っ取り、メキシコで深刻な問題に

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メキシコのロペスオブラドール大統領は、暴力犯罪の抑制に苦戦している。同国中部を経由して物品を輸送する企業にとって、治安は大きな問題だ。米自動車大手フォードや仏食品大手ダノン、中国のドローンメーカーDJIは今年、メキシコで貨物トラック乗っ取りの被害を受けたと報告している。

メキシコでは、2015年から2022年半ばまでに6万1806件の暴力的なトラック貨物強盗事件が起きたとされるが、実際の件数は公式統計をはるかに上回るだろう。政府のデータによると、メキシコで今年上半期に発生したトラックの乗っ取りは3717件で、昨年同期の3543件から4.9%増加している。

今年は、暴力を伴うトラック乗っ取り事件の頻度が増えている。上半期に起きた窃盗や強盗を原因とした貨物喪失のうち、暴力を伴うものの割合は87.2%で、昨年同期の84.7%から上昇した。

メキシコ北部の国境地域で報告された貨物トラック乗っ取りの件数は比較的少ないものの、中部のメキシコ州とプエブラ州では暴力的なトラック強盗が横行している。

首都メキシコ市が位置するメキシコ州では今年上半期、暴力を伴うトラック貨物強盗が計2034件発生。これはトラック乗っ取りの全件数の48%に当たる。こうした事件が次に多かったのは隣接するプエブラ州(773件)、その次はミチョアカン州(343件)だった。1~6月にメキシコで発生した暴力を伴うトラック強盗のうち、85%はこの3州で起きていた。

こうした事件の大半は日中の移動中に発生。トラックとともに運転手が連れ去される割合は87%に上る。貨物強盗とトラックの乗っ取りは、メキシコへの投資を検討する企業が理解すべき深刻な政治的リスクだ。

同国南部での製造・インフラ分野に対する投資誘致に取り組むロペスオブラドール大統領は、国内で続く治安問題への対策を強化する必要がある。これまでには、軍や国家警備隊を動員する軍事的な治安対策を打ち出してきたが、非軍事組織の警察での人材採用・訓練や犯罪者の捜査・逮捕を支援する取り組みははるかに少ない。トラック乗っ取りの横行は、大統領の治安対策の欠陥を浮き彫りにしている。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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