マリリン・モンローの人生を創作 ネトフリ作品に批判殺到

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マリリン・モンローを題材にしたジョイス・キャロル・オーツ作のフィクション小説を映画化したネットフリックス作品『ブロンド』が、ネット上で激論を呼んでいる。

同作はベネチア映画祭で上映された際、14分にわたるスタンディングオベーションを受けるなど、当初は高い評価を受けた。しかし、批評家による映画レビューサイト「ロッテン・トマト(Rotten Tomatoes)」では44%という低評価がついている。視聴者と批評家はいずれも、その生々しい性暴力描写や、中絶反対派のプロパガンダとも受け取れるような強制中絶のシーンに拒絶反応を示している。

さらにことを複雑にしているのは、同作(と原作小説)がモンローの人生を創作し、芸能界にはびこるひどい女性嫌悪に苦しめられる女性の象徴として描いていることだ(ツイッター上では、作品の内容で事実とは異なる部分を集めたスレッドさえも作られた)。

モンローファンの多くは、彼女のイメージを搾取する行為にうんざりしている。最近では、キム・カーダシアンが話題作りのため、モンローの象徴的なドレスをメットガラ2022で着用し、ドレスに修復不能な損傷を与えたと批判された。

また、モンローの功績について無関心あるいは否定的ともとれる発言をしたアンドリュー・ドミニク監督のインタビューも、さらなる批判につながった。ドミニクは英映画誌サイト・アンド・サウンドのインタビューで、自分はモンローの苦しみに何よりも関心があったと示唆。さらには、モンローの映画『紳士は金髪がお好き』(1953)の主人公2人を「身なりの良い売春婦」と呼んだ。

ネットフリックスで『ブロンド』の配信が始まると、視聴者からはすぐにモンローの描写に対する不満が噴出。作中の生々しい描写は、女性嫌悪に対するまっとうな批判ではなく、悪趣味で好色なものとして捉えられた。

実際に起きた悲劇的な出来事に基づいたフィクションなどをめぐってはこのところ、暴力や苦しみについて責任ある形で描写する方法に関する議論が白熱してきた。米連続殺人犯のジェフリー・ダーマーを描いたネットフリックス作品『ダーマー』も同様の議論を呼んでいる。

米HBOのファンタジードラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』も、家父長制と君主制の両方に抑圧される女性の苦しみを生々しく描写したことで批判を受けた。だが、優雅ながらも自由がない「黄金の鳥かご」の中でも主体性を持ち奔走する深みのある女性像を作り上げた『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』と異なり、『ブロンド』はモンローを一面的な犠牲者として描いたことで批判された。

『ブロンド』と同じく、女性嫌悪に付きまとわれ、本当の自分と表向きのイメージの間で悩む女優を描いた作品としては、今敏監督のアニメ映画『パーフェクトブルー』がある。同作は現在論争の的とはなっていないが、『ブロンド』よりも深い映画と言えるだろう。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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