スコットランド自治政府の高等教育に対する姿勢は、公共政策の失敗の見本と呼ぶべきものだ。端的に言って、与党スコットランド民族党(SNP)の掲げる目標とは正反対の結果をもたらしているからだ。
どういうことか。スコットランドでは、住民は域内のどの大学でも無料で高等教育を受けることができる。それには、英国の大学ランキングでオックスフォード大学やケンブリッジ大学をおさえ、1位に選ばれたセントアンドルーズ大学も含まれる(何を隠そう、筆者の母校でもある)。
スコットランド自治政府のこの政策は、所得格差の是正というSNPの目標にも合致している。SNPのウェブサイトでは「不平等との闘いは、より公平な社会の実現にとってだけでなく、経済の長期的な繁栄にとっても不可欠」とうたわれている。
こうした目標はたしかに真摯なものではあるのだろう。だが、それがうまくいっているかというと、そうではないのだ。
問題の核心は、ほかならぬ地元スコットランドの大学進学志望者が割りを食いがちだという点だ。
スコットランド自治政府が地元出身者の代わりに域内の各大学に支払う年間授業料は、1人あたり2000ポンド(約31万円)弱となっている。これは、英国内のほかの地域出身者がセントアンドルーズ大学に支払っている授業料9250ポンド(約144万円)に比べるとかなり少ない。
セントアンドルーズ大学の学生のうちスコットランド出身者が28%にとどまるのには、おそらくこうした事情が絡んでいる。ほかの政府と同様、スコットランド自治政府も大学授業料に振り向けられる予算には限りがあるので、好むと好まざるとにかかわらず、大幅に割り引かれた授業料で入学できる枠には限りがあるのだ。
要するに、セントアンドルーズ大学という英国最高峰の大学に入るハードルは、ほかの地域の人よりもスコットランド人のほうがおそらく高くなるということだ。