いきなり大成功したオープンシーだが、不正行為から、新たな競合NFT市場まで、多岐にわたる大きなリスクを抱えている。例えば、オープンシーの公開市場アプローチは、偽造や詐欺、不正行為のリスクを高める。アマゾン・ドット・コムやeベイが常々頭を悩ませている問題だ。例えば、他人のアート画像をコピーして、オープンシーでNFTとして販売することだって可能だ。
NFTアートに目を見張るような価格がついたことで、より多くの一般人が自らもクリエイターやコレクター、または“投機家”を目指すようになり、誰でもアーティストになれるという精神を掲げ、流通市場も整って便利な機能を備えたオープンシーが注目されるようになった。バブルのようだが、ではバブルがはじけたときにオープンシーはどうするのか?
フィンザーの答えはこうだ。「厳しい冬をやり過ごす必要が生じたときのために、十分な備えがあります」
NFT市場の台頭
NFT市場が“爆発”したのは2021年初めかもしれないが、必ずしも、オープンシーが仕掛けたからではない。すでに、キュレーション済みの高品質なアートを扱う「Nifty Gateway(ニフティ・ゲイトウェイ)」のようなプラットフォームが注目を集めていたからだ。
ただ21年 3月に、競売会社クリスティーズでデジタル・アーティストの「Beeple(ビープル)」こと、マイク・ウィンケルマンのNFTアート「Everydays: The First 5000 Days」が作者存命中のアート作品としては史上3番目に高い6900万ドルで落札されたことで、メディアの関心も最高潮に達し、幅広く知られるところとなった。
こうしたこともあって、新たな資産クラスとしてのNFTに注目が集まっている。22年5月には、米国最大の暗号通貨取引所で、当初はオープンシーに出資していた「Coinbase(コインベース)」が自ら、NFTマーケットプレイスを公開。同社のブライアン・アームストロングCEOは、新事業がコア・ビジネスの暗号通貨取引と「同じか、またはそれ以上の規模になる可能性がある」と期待を隠さない。
同月、やはり暗号通貨取引所大手の「Kraken(クラーケン)」がNFTへの参入を発表するなど、すでに“新時代のプラットフォーム”の競争が始まっている。NFTはボラティリティ(価格変動)が大きい暗号通貨の価格に左右されてしまう。淘汰されないよう、サービスの多角化と認知度の向上が不可欠になる。
NFTマーケットプレイス「ニフティ・ゲイトウェイ」を立ち上げたダンカンとグリフィンのコックフォスター兄弟(写真)。2019年には、フェイスブック創業を巡る訴訟で有名な、暗号通貨取引所大手「Gemini(ジェミナイ)」共同創業者のキャメロンとタイラーのウィンクルボス兄弟が同社を買収した。