ビジネス

2022.10.03 07:00

年収2000万円の攻防も! 営業人材争奪戦が起きる3つの理由

Forbes JAPAN編集部

向上心の強い人材を迎えようと転職市場が活性化している。これが人材争奪戦が起きている第2の理由だ。

組織のDXに後れを取っている企業のセールス職が、DXが進む企業を選んで転職する。若い世代の利用者が多いワンキャリアが会員向けに提供する20代の就職体験談には「(福田康隆の著書)『THE MODEL』を読み、この営業モデルを確立する会社で働こうと考えた」とあった。

職種は変えずに伸びている業界や外資系企業などへ転職するのは、法人営業の人材。待遇の向上を図るのも一因だが、新たなセールスの仕組みを学んで使いこなそうとする意気込みも感じる。彼らには「自分のキャリアを設計できないことに対する不自由さ、所属企業が求めるジェネラリストのキャリアに対して、自身の専門性の不足を不安視する声がある」とワンキャリア取締役CSOの北野唯我は分析する。

銀行や生保などの法人営業で経験を積んだ人材が、外資系コンサルタント企業へ転職する動きも出ている。顧客が抱える課題を解決に導く経験を積むにつれ、「より経営や事業全体の課題解決や戦略策定に携わりたい」とコンサルティングする側へ移る格好だ。

これもDXが進むなか、専門スキルを身につけて自らのキャリアパスを描きたいという職業観の表れだろう。「若い人材の声に耳を傾けると、見落としている経営課題がわかる。彼らの退職理由は、その企業がDXに対応できているかのリトマス紙」と北野は言い切る。

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セールスフォースは大手企業から転職してくる人材もあれば、同社からIT企業への転職も。セールスDXを実地で学ぶ登竜門のようだ。一方、コロナで打撃を受けた旅行・観光業から、やむなく転職した例もある。

同じ営業職でも、対面営業のフィールドセールスから、コロナ禍の働き方に適した職種(インサイドセールス、カスタマーサクセス)への転向も目立った。セールスの分業化と、働く場所を選ばないワークスタイルの普及がかみ合うことで、育児や介護、副業などにも時間を充てたい優秀なセールス人材の呼び水になる。つまり「働き方の多様化」が、人材獲得競争を引き起こした3番目の理由と言える。

こうした現象は、会社をどのように変える可能性があるのか。次ページからは、日本企業の営業職が抱える構造的な問題、セールスにおける最新の動きと背景、営業という職能から組織を変えたいと考える読者へのメッセージを展開していく。


伊藤 綾◎ビズリーチ ビズリーチ事業部 ビジネス開発統括部 統括部長。塗料メーカーの研究開発職、エグゼクティブ向けヘッドハンターを経て、大手精密機器メーカーで法人営業や事業企画。2013年ビズリーチ入社。広報、人事、マーケティング領域を経験後、現職。

北野唯我◎ワンキャリア取締役CSO、作家。新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局勤務。ボストン コンサルティング グループを経て、2016年ワンキャリア参画。20年から現職、戦略・採用・広報部門を統括。21年10月、東証マザーズ(現東証グロース)上場。

文=神吉弘邦

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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