こんなやり取りをした覚えがある人は少なくないのではないだろうか。スマートフォンの小さい画面が普及するにつれて目にする機会がぐんと増えた、3本線のメニューアイコン。アイコンを目にする機会と比例するほど普及していないが、その名は「ハンバーガーメニュー(ボタン)」。ビジュアルを並べるとなるほど納得、ではないだろうか。
ハンバーガーボタン
「換気口ボタン(笑)」?
これを「発明」したのはアメリカ人のグラフィックデザイナー、ノーム・コックス氏で、2015年にはBBCの記事にも取り上げられている。コックス氏は1970年代後半から80年代前半までゼロックス社に勤め、「Xerox Star(ゼロックス・スター)」というPCに使われたアイコンやツールバーなどのGUI (グラフィカルユーザーインターフェース)を最初にデザインした人物だ。
ゼロックス・スターのユーザーインターフェースにはコマンドを実行するボタンが複数使われていて、そのうちの一つが現在スマートフォンやアプリなどで頻繁に目にする3本線のボタン、「ハンバーガーメニュー」だったのだ。当時、コックス氏と仲間はこのボタンを「換気口ボタン」と冗談半分に呼んでおり、これは同氏が開発した他のアイコンの中の一つに過ぎなかった。
換気口ボタンとも呼ばれたハンバーガーボタンが世界中に広まるまでに、約30年の時が流れた。PCやインターネットの進化とともにスマートフォンが普及し、小さい画面でスムーズに操作を行うための工夫が幾十にも試みられた。そんな中で、ハンバーガーボタンがユーザーインターフェースデザインにおいてそこここに取り入れられるようになったのである。
アメリカをはじめとする英語圏では、この3本線のボタンがポピュラーになるとともに、「ハンバーガー」という呼び方も一般的になったという。また、3つの点もしくは線を縦に並べたボタンは「ケバブ」、3つの点を横に並べると「ミートボール」。さらに、6つもしくは9つの点が両辺に均等に並んでいるボタンは「ワッフル」もしくは「弁当(Bento)」、「>」を90度右回転させたボタンは「キャロット」と呼ばれている。
ケバブ
ミートボール
ワッフル(弁当)
キャロット
メニュー名「焼きとり」?
私たちは現在、PCやスマートフォン、アプリなどで動作を行う際に「メニュー」という、本来、「料理の品目」を指す外来語を疑問に感じることなく使っている。「menu」をカタカナではない日本語に訳すと「献立」になるだろうか。
一方で、メニューというカタカナの日本語は、英語でのmenu同様、使われる範囲が料理以外の分野に広く受け入れられてきた。ハンバーガーも日本で長く人気がある外来の食事だが、はてさて、「ハンバーガーメニュー」は「メニュー」ほど広く使われる呼称になるかどうか。
縦の3本線は「焼きとり」の方が「ケバブ」より日本人には馴染みがあるし、はたまた、横に3つ並ぶ線の「ミートボール」は「串団子」に見えてくる……。日本食の名称は、グローバルでユーザーインターフェースを語る際に普遍的に使えるものではない。だが、日本の食べ物の名前でよりしっくりくる呼び方がアイコンやボタンの呼び方として普及するのか、パンより米派の筆者としては興味深いのである。