ビジネス

2022.09.16

エリザベス女王の国葬前に一部業界に混乱 過剰反応も?

Photo by Henry Nicholls - WPA Pool/Getty Images

英国の小売業者が相次ぎ、9月19日を休業日とすることを発表している。同日には8日に死去したエリザベス女王の国葬が行われる。政府はこの日を休日としたが、小売店などに閉店が義務づけられたわけではない。

だが、それでも多くが亡き女王への敬意を表するため、この日は業務を行わないとしている。主要なスポーツイベントの一部も、すでに延期が決定されている。映画館チェーンのシネワールドやショーケースも、この日は休業する。

テスコ、アズダ、セインズベリー、モリソンズなど、スーパーマーケット・チェーン各社は、この日を記念するため、「主要な店舗を休業とし、オンラインで注文を受けた商品の配達も休止する」と発表。一部はコンビニエンスストアなど小規模店舗のみ、営業時間を短縮して店を開くという。

また、モリソンズの広報担当者は休業を発表した際、女王への敬意の印として、すでに「各店舗ではセルフレジの音量を下げ、通常は店内で流している音楽をとめ、アナウンスも控えている」ことを明らかにした。

高級百貨店のハロッズやセルフリッジ、ディスカウントスーパーのアルディやリドル、百貨店チェーンのジョン・ルイス、マークス&スペンサー、ファストファッションのプライマーク、そしてマクドナルドも、この日は休業の予定だ。

ただ、ジョン・ルイス傘下のスーパーマーケット・チェーン、ウェイトローズその他の食料品を取り扱う店のうち葬列が通るルート上の店舗は、葬儀が執り行われている間のみ店を閉め、前後の時間は営業するという。

一方、およそ400店舗のパブを運営するフラーズ・グループは、通常通り営業する。「地域社会における自らの役割」を強調しており、広報担当者は、「人々が集まり、敬意を表するための場所を提供する」と述べている。

混乱を招いた企業も


カナダの不動産投資会社ブルックフィールド・プロパティ・パートナーズ傘下のリゾート施設、英センター・パークスは、「敬意を表し、またできる限り多くの同僚たちがこの歴史的瞬間に立ち会えるようにするため」、国葬の日は国内5カ所の施設を休業とし、チェックインもチェックアウトも受け付けないと発表した。

通常は365日営業している同施設のこの決定は、多くの利用客の間に混乱を招いた。宿泊予定客の中には、何カ月も前に予約し、料金を先払いした人たちもいる。リゾートが参加者を募るアクティビティに申し込み、料金を支払い済みの人もいる。

また、同社が19日以前にチェックインし、同日に滞在予定の利用客に対し、「葬儀の日は24時間、施設の外に出ているように」と求めたことについても、多くの苦情が寄せられた。

SNSなどを通じて批判が殺到したことを受け、同社はその後、方針を変更した。だが、計画を完全に撤回したわけではない。同日に滞在中となる利用客には、「葬儀の最中は室内にとどまるよう要請」、チェックイン予定の利用客には、「到着を翌日に変更するよう提案」したことで、さらに多くの人から怒りを買っている。

在位期間が英国史上最長となった君主の死を受け、政府が示したガイドラインは英国の多くの企業に、自社の利害関係者にとって適切な行動はどのようなものか、改めて考える機会を提供した(特定のルールブックは存在しない)。

センター・パークスが引き起こした混乱は、人々がいまこの時点で求めるものが何かについて、企業が適切に把握することの重要性を示している。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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