埼玉の消滅可能性都市をリモートワーカーが救う? LACという暮らし方

秩父市と横瀬町にまたがる武甲山


そこでまず、2019年に開設したのが町内外の人が交流できる公共施設「Area898」を開設。横瀬町役場まち経営課が入っているほか、自習やワークショップなど様々な用途で利用でき、オープンから1年で約4000人が訪れた。そして2022年5月、その隣にLAC横瀬を誘致した。

「Area 898は“官”が運営するスペースなのですが、我々はこれまで官民連携を進めてきたこともあり、もっと官民の隙間を埋めていきたいという思いがありました。そこで民営のLACを隣同士につくり、壁をなくせばいいのではないかと考えました」


Area898

実際に2つの施設はフロアがつながっている。LACのコミュニティスペースも、キッチンを含めて誰でも利用できるオープンなスペースになっているため、物理的に官民の交流が促進される。LAC側には一部宿泊者向けのワークスペースがあり、一般利用は1日500円となっている。

そこでは、LAC横瀬のコミュニティマネージャーで横瀬町の地域おこし協力隊でもある新堀桂子が、その交流に一役買っている。

「Area 898に町役場の方が常駐していたり、町長や副町長が日常的に足を運んでくださったりしているので、宿泊者の方とすぐにおつなぎしています。そこでの会話がビジネスにつながる、なんてケースもあります」

LAC横瀬の利用者は、毎月50人〜100人ほど。短い人は2、3日〜10日、長い人は数カ月単位で滞在する。通常のワーケージョン利用に加えて、新しいビジネスアイデアやライフスタイルを求めて来る人も多い。


LAC横瀬の宿泊スペース

ビジネスアイデアが生まれやすい場所


LAC横瀬で過ごす一日は、刺激的だ。周辺に豊かな自然があるため、棚田や川などに散策に行ってから気持ちよく仕事を始めることができる。ランチは、飲食店で地元のグルメを満喫し、夜は他の宿泊者や町の人と交流しながら食事を楽しむなど、宿泊者たちは思い思いの毎日を送っている。

「地元の農家さんたちがよく野菜を提供してくださって、夜はそれを料理好きの方が率先して調理をしてくださることが多いですね。『一緒に食べませんか』と声を掛けていただき、皆で集まっていただいています。先日はダンボール箱いっぱいにジャガイモをいただいたので、肉じゃがやみそポテトにして楽しみました」(新堀)


LAC横瀬のキッチン

週末には、宿泊者が企画したものづくりのワークショップや交流イベントなどが開催されることもある。フロアには寄付されたグランドピアノや電子ドラムもあり、音楽演奏が行われることもあって賑やかだ。

こうした宿泊者の動きについて、LACの事業責任者を務めるLIFULLの小池克典は「まさに狙い通り」と話す。

「東京で仕事をしていると、会議やイベントで名刺交換をする機会は多いのですが、結局そこから何か生まれることは少なくて。仕事が終わった後、雑談や食事をしているときに、人として好きになっていくことで、ビジネスでも連携できることが多いと思います。コリビングは、オンの時もオフの時も同じ場所にいれるので、何かが生まれやすい。そこが魅力なんです」
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文=田中友梨

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